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35話――デンデデン⑥

 洗いざらいぶちまけ、全てを話し……そして、金髪の女はメモを取り終えると笑顔になった。


「それじゃあ、ちょっと待ってなさい。他の奴らと照合するわ」


「あいい……」


 良かった、よかった良かった良かった!

 助かる、助かるんだ!

 ペイワンの心が、喜びで埋め尽くされる。こんな異常な状態のまま、死ぬことは無くなったのだという安堵感で。

 プライド、尊厳。それらを全て差し出した。その代わりに戻ってくる、健康な肉体――否、人の体。


(早く……早くしてくれ……!)


 部下たちが次々に答えていく。当然だが、ペイワンは全て本当のことを話している。だってこれで後で嘘だとわかったら、今度こそこんな芋虫にされるかもしれないのだ。

 それだけは、嫌だから。


「ん、大体揃ったわね。――レイラちゃん、良いわ。そいつにたっぷり注射してあげて」


「はーい」


 金髪女……否、今はもう女神のようにすら思える美女が、根暗女に指示を出す。彼女はペイワンの横に座ると、注射器を取り出した。

 全身に巡らせるためなのか、先ほどよりも明らかに注射器が大きい。ありがたい、これで普通の体に戻れる。


「はい、じゃあチクッとしまーす」


 ぶすっ、と巨大な針が刺される。すると次の瞬間、ペイワンの手足がぐんぐんと成長しだした。五歳児ほど、十歳ほど、そして二十歳ほど――。

 手足が思う通り動き、立ち上がることが出来る。ペイワンは歓喜しながら、立ち上がった。


「ああ……! 神よ、おお神よ……! ありがとう、ありがとう……! 貴方も、回復させてくれて……!」


「お礼を言われる筋合いはありませんね。だってまだ実験は続いていますから」


 陰気女の手を掴んで感謝しようと近づこうとした時に、異変に気付いた。

 手足が、明らかに大きくなっていることに。


「……あ、あれ?」


「ああ、やっぱりそうなりましたか」


 どんどんと、視線の位置が高くなっていく。そこでやっと……自分の手足が、異常な大きさになっていることに気づいた。太さは殆ど変わらぬまま、まるで針金細工のように伸びていく――。


「えっ、えっ!?」


 先ほどの赤子の手足とは違い、まるで魔物のような奇形。マリオネットのような体型になり、逆に手足に力が入らなくなってくる。

 天井に頭がついた。それを見た根暗女は、やれやれとため息をついた。


「止まらなくなっちゃうんですよね、これ。一定量以上を投与すると、伸び続けちゃうんですよ」


「なっ、なんとかっ、なんとかしてくれ!!!」


「えー? めんどくさいですね」

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