35話――デンデデン⑤
芋虫状態にされ、絶叫する。そんなペイワンの状態を観察しながら、メモを取る根暗女。完全にイカれている。
ペイワンは恐れおののき、涙目で唇を噛んだ。
(なんで……なんでオレがこんな目に……!)
いつも通りの朝、いつも通りの仕事。
善行を積んでいたとは思っていない。他人の人生をさんざん食い物にした。
だから、殺されるのは覚悟していた。
それも、碌な死に方は出来ないと覚悟していた。
でも、しかし。
こんな終わり方って無いだろう!?
(どうすれば……どうすればいいんだよ……オレは、オレは……)
手足が、動く。それが余計におぞましさを助長し――もどかしく、そして精神を蝕んでいく。
正気が失われる感覚……そんな中、ペイワンは涙を流しながら、ぺろぺろと金髪女の靴を舐めだした。
「だじう……げで……ごべんなじゃい……もうわるいごどは……じまぜん……」
――あり得ないと思っていた、懺悔の言葉を唱えながら。
両腕、両足が自由に動かない。それでも、必死に許しを請う。懇願する。
ほんの少しの可能性に賭けて。
「てあじを……もどじでぐだざい……ごべんなじゃい……」
金髪の女はペイワンの髪を掴むと、勢いよく引き抜く。そして仰向けにひっくり返すと、そのアバラを踏みつけて来た。
ぐしゃぐしゃぐしゃあ! と勢いよくペイワンのアバラが粉々になり――そして、すぐに復活する。
「うぎゃあああああああ!!」
痛みにのたうち回るペイワンを、金髪の女は見下ろす。そして心底ガッカリしたような顔をしながら、ため息をついた。
「アンタさっき、懺悔も後悔もしないって言ってたじゃない。嘘だったの?」
「ひっ、ひっう、ば、ばい……うぞでず……ごべんなじゃい……強がってまじだ……」
「……あっそ。ねぇ、レイラちゃん。元に戻す薬は無いの?」
「ありませんよ?」
あっさりと首を振る陰気女。しかしすぐに別の注射を取り出すと、ペイワンの顎に駐車してきた。
すると……さっき抜けた歯が、グングンと成長して生えそろうでは無いか。
「えっ……」
「この通り、成長薬と一緒に使う物なんですよ」
「ああ、なるほど。それなら効率的に治せるわけね」
そして数本の注射器を用意する陰気女。横の金髪女が、その注射器を一本受け取ってペイワンの腕に近づけた。
「全部話すわよね?」
「はい!」
ペイワンは話した。自分の知り得る限り、雇い主の全てのデータを。




