34話――銀欲の悪役令嬢⑤
四番目の商会は、ギルドに所属した上で中立を保ってる。
だからこそ、最近急上昇したラピスラズリ商会が余計に魅力的なんでしょうね。
一歩抜きん出れば、マイターサの商会を掌握できる。
「そうなってしまえば、行政の手から完全に離れちゃう。だからこそ、ここで叩かないといけないのよ」
しかし三商会が消えれば、商会ギルドの運営が傾く。商会ギルドの運営が傾けば、無関係の商会も打撃を受ける。
であるから、商会ギルドと同様の働きーー否、それ以上の働きが出来る銀行が必要なのよ。
「銀行があれば、三商会が消えても他の商会の保護が出来る。三商会が残ったままだとしても、そこまで来たらギルドに口出し出来る程の発言力を得られる」
その頃には騎士団も出来てるでしょうしね。
領法を出すことも出来るし、金もあるから。
「そのために……我々に矢面に立てと? 三商会とバランスを取るために?」
声に怒りを滲ませるマティルダさん。なるほど、さっきの資料だけでそこまで読めたか。やっぱりかなり優秀なのね、この人。
でもそれは少し違う。私はすぐに首を振って、指でバッテンを作った。
「ノーよ。たしかに貴方たちの人員やノウハウは魅力的ね。でも、矢面に立たせたいわけじゃないわ。むしろ独立を保ったまま、私達に協力してくれないと困る」
「……どういう意味ですか? ラピスラズリ商会をその銀行とやらに変えるつもりだったのでは?」
「どうしてそうなるんですの」
マティルダさんの言葉に、疑問を呈するシアン。
「銀行を作るには人員と資金が必要なのよ、シアン。それでラピスラズリ商会を乗っとって、銀行に作り変えてしまうのではって二人は思ってるわけ」
「なるほど。でも違うと?」
「ええ。それだと本業に差し障りが出るでしょ? 私がやろうとしているのはその逆。人事や財務だけ独立させた上で、別の商会も一緒に運営するのよ。要するにグループ商会にしちゃうのよ」
私達は騎士団や銀行を作り、運営したい。そのために、大人数を雇ったり、財務を管理するノウハウやが欲しい。
ラピスラズリ商会は他の商会の邪魔を排除して、運営を続けたい。
「だから一時的に、私達とあんたらの代表を選出して別の商会を作る。そしてそこに人事と財務を集中させて、その上で各商会ごとに業務を行う。お金の融通もしやすいし、何より私達が暴力から守ってあげるわ」
私の言葉に、マティルダさんは難しい顔。一方、モナークさんは合点が言ったとばかりに頷いた。




