34話――銀翼の悪役令嬢②
だから、現金で売上が立つというのは非常に重要なのだ。
また、第三の会社が――つまりうちが入ることで、債権を回収する業務を委任出来る。金は減らないって寸法ね。
「しかも、アンタらキャッシュを置いときたくないんでしょ?」
「は? イザベルさん、現金で貰いたいのに現金を置いときたくないってどういうことですか?」
隣で怪訝な顔をするレイラちゃん。今までの話の流れを聞いていたら、おかしな話と思うだろうけど……。
「単純な話よ。お金って嵩張るの、金庫に置いておくにしてもそれを維持するのにお金がかかる。自転車操業まではいかなくても、かなり急ピッチに出店や事業拡大をしてるのはそのためでしょ?」
「いや、えーっと話が見えませんよイザベル様。……現金は欲しいけど、その現金は使っちゃう。それは金庫に置いておけないから?」
「イエス。さっき叩きのめしたチンピラいたでしょ?」
この本店の前で、いたずらというには悪質なことをしようとしていた連中。殴って吐かせたけど、アイツらはとある商会から悪さをするようにと依頼されただけと言っていた。
そして、カーリーが言っていた「この人らは商会ギルドに所属していない、大きな商会です」という情報。
これらを総合して考えると――
「他の商会から、嫌がらせ受けてんでしょ? だからやられないように勢力を伸ばすしかないし……金庫の中に金を入れておけば盗まれる」
「ええ……そんなことします?」
怪訝な顔のカーリー。しかしマティルダさんは、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「ええ、まぁ……」
「ん、だから現金で手に入るなら分割払いするのも吝かじゃない。……もっとも、私らと組んでくれるならチンピラくらいなら蹴散らすけどね」
あのチンピラどもは、今はユウちゃん達が見張ってくれている。すぐにアジトも割り出せるし、そしたら蹴っ飛ばしてくればいい。
幸い、罪人ならいればいる程良いからね。
「というか、貴女……あのチンピラを蹴散らすと仰いましたけど、出来ますの? 戦力ったって、たった五人でしょう?」
「余裕よ。私達、最強だから」
というかシアンは、もともとこの体だったのに……なんでそんなに自信が無いのかしら。この体があって、負ける方が大変でしょうに。
「……でも、ただそのシステムを使わせてくれるわけでは無いんですよね」
モナークさんが恐る恐るという風に聞いてくる。




