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32話――空想錬金読本④

 マティルダさんに案内されて向かった部屋は、いわゆる応接間という風体だった。膝までのローテーブルを挟み、三人掛けのソファが二つ並んでいる。

 そして奥のソファに座っていたのは小太りで禿げた、背の低いのオジサン。満員電車に乗ってハンカチで汗を拭っていそうなタイプだ。一見すると、セクハラのスケベ親父って感じ。

 とはいえ、その視線……というか眼光はイヤらしい感じじゃない。むしろ隙が無く、こちらの様子をうかがっている。人事担当って聞いていたけど、相当仕事が出来るんでしょうね。

 私は少しだけ緊張しつつ、ワンピースの裾をつまんでお辞儀をする。


「お初お目にかかります。イザベル・アザレアです」


「これはこれは。お会い出来て光栄で御座います。わたくし、モナーク・サルサと申します。ラピスラズリ商会の人事部門を担当しております。どうぞよしなに」


 額の汗をぬぐい、こちらにお辞儀してくるモナークさん。私は彼に笑みを向けた後、示された椅子に座った。

 左右にレイラちゃんとカーリーが座り……私の対面にシアンが、その右にマティルダさん、反対にモナークさんが座った。


「ちょっと狭いし、カーリー膝に座る?」


「どこの世界に商談中、主の膝に座る従者がいるんですか……」


 呆れた様子のカーリー。雰囲気を和ませようとした、ちょっとしたジョークじゃない。いやまぁ、ちょっと『出来る女性』が目の前にいるせいで緊張しているのは否めないけど。

 私はコホンと一つ咳払いしてから、改めて三人を見た。


「御社のシアンさんから既に伺っているかもしれませんが……本日は、是非とも我らアザレア家と提携を結んでいただきたく思いまして」


 というか取り込ませて欲しい。

 私がそう思っていると、マティルダさんが背筋を伸ばした。


「ええ、会長から聞いております。確かにイザベル様が仰る技術が本当であれば、それは我々にとって非常に好ましい物となります」


「はっはっは、製品作成の部門長にも来てもらうべきでしたかね」


 汗を拭うモナークさん。この部屋、ちょっと暑いのかしら。

 私がレイラちゃんに目配せすると、彼女は懐から三つほど紫色に光る石――魔石を取り出す。


「こちら、サンプルですのでお渡しします。あ、勝手に真似しようとしない方が良いですよ、中見たら発狂すると思います」


「……ちょっと待ってください、レイラさん。そんな危ない物なんですの?」


 眉根に皺を寄せるシアン。私もそれに関しては初めて聞いたけど……まぁ、レイラちゃんの作った物だしね。中身を見ることに対するプロテクトくらいかかってるか。

 そう私が納得していると、彼女はいつも通りマイペースに首を振る。


「いえ、シンプルに既存の魔法技術や常識が通じないので……私の作ったそれを解析しようってくらいに詳しい人が見たら、そういう意味で発狂します」

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさしくレイラちゃんクオリティ
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