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32話――空想錬金読本③

 さて、色々とモブどもから聞き出した上で……再度、ラピスラズリ商会の建物の前。何故かげんなりしているシアンが、大きな大きなため息をついていた。


「……血生臭いですわぁ」


「アンタも領主やってたんでしょ? それなら、こんくらいでうじうじ言うんじゃないわよ」


「これを鉄火場とも修羅場とも思わない価値観は貴族にはありませんわっ! ノブレスオブリージュをはき違えてまして!?」


「アンタに言われたくないわよ!」


 というか死人が出てないんだから、鉄火場でもなんでもないでしょうに。私なんて領主になって初めての仕事で、三十人くらい虐殺したからね。

 ……まあ、それは流石にこの子には言わない方が良いかもだけど。この子が人を殺すのは、王子と出会った後のはずだから。

 なんて原作に思いを馳せていると、建物の扉が開く。そこには、背筋の伸びたおばあちゃんが立っていた。


「ご苦労様です、シアン商会長」


「お迎え、ありがとうございますわ。マティルダさん」


 おばあちゃん――マティルダさんにお礼を言うシアン。彼女はこちらを振り向くと、一瞬だけ苦虫を噛み潰すような顔をしてから……ニコリと笑顔を浮かべた。


「イザベル様。こちら、マティルダさん。先ほどお話ししました、財務担当の方ですわ」


 やっぱまだ私のことをイザベルって呼ぶのが嫌なのね。これに関しては流石に申し訳ないというか、何か対策を取った方が良さそうね。


(あだ名も変だし、子爵って言うのも嫌でしょうし……。早急に考えなくちゃ)


 彼女の協力無くしては、この商会と提携を結ぶなんて出来ない。尊厳破壊は好きだけど、味方の尊厳破壊してどーすんのって話。

 なんて考えていたら、マティルダさんは鉄面皮でこちらに礼をしてきた。


「お初お目にかかります、イザベル子爵。マティルダ・アーリントンと申します。紹介されました通り、ラピスラズリ商会の財務部を担当しております」


「初めまして、マティルダさん。イザベル・アザレアです。マータイサの領主と……後は最近、カムカム商会の商会長、そしてトミサ等を巻き込む信金の長も務めております」


「ご活躍はかねがね、お伺いしております。……こちらへどうぞ、モナークも首を長くして待っております故」


 仕事出来そうな人ねぇ、正直言いくるめられる気がしない。

 今までは「この世界に無い概念」を「それっぽく凄そうに」言って色んな人を巻き込んできたけど……今回私がやりたいのって普通のM&Aだからね。

 シアンがポンコツだからどうにかなると思ったけど、流石に先代会長も馬鹿じゃないか。

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