32話――空想錬金読本②
残り二人の男は呆然と突っ立っている。この感じ、プロではなさそうね。
となれば後は軽くひねるだけ。私は一人の腹に蹴りを入れ、頭が下がったところを踏みつけて地面にめり込ませる。
最後に残った男の足にローキックを入れると、力加減をミスしたのかそのまま空中で一回転してしまい……そのまま、痛みで気絶してしまった。
「あちゃ、ちょっと弱すぎるわね」
「いやいきなり何してますの!? れ、レディとしてはしたないですわ!!」
「イザベル様! はしたないですよ!」
カーリーとシアンがプンスコしながら追いかけてきた。そして、私にのされた三人をほうりだし説教を開始する。
「なんで蹴り技で倒すんですか! イザベル様、今日はスカートなんですよ!?」
「というか、ヒールで飛んだり跳ねたりするんじゃありませんわ! 折れたらどうしますのッ!」
「いや、戦いづらいから自分でよく折ってるし破いてるからいいかなって……」
「「レディとしての慎みを覚えてください(ですわ)!!」」
まさかの意気投合をする二人。こんなに仲良いのね、この子たち。
ちょっと私が困っていると……ボディガードであるユウちゃんとマリンが呆れた表情で追いついてきた。
「女神……僕らがなんのために遠巻きに張ってるか理解しているかい?」
「姐さん、基本はオレたちに命令出してくださいッス。万が一があったら、全員が困りますから」
それはそうなんだけども……。
ぐうの音も出ない正論で二人から追い詰められていると、のんびりと追いついてきたレイラちゃんが何やら注射器を取り出していた。
「ちょっと、なにしてるのよレイラちゃん」
「自白剤です。この人らの目的をはっきりさせたいんでしょう?」
そして一切の躊躇もなく三人に注射するレイラちゃん。話が早くて助かるわ、ほんと。
私は頭を回転させながら、他の皆の方を向いた。
「シアン、待ち合わせの時間までどれくらい?」
「え、えっと……あと三十分くらいかと……」
「それなら二十分は時間取れるわね。マリン、ユウちゃん。周囲にコイツラの仲間がいないか捜査。カーリーは一旦回復をお願い。レイラちゃん、吐かせるわよ。手段は任せるわ」
「なんでそんなにイキイキとしてますの!? 暴力の隣でしか息ができないタイプなんですの!?」
流石にそんなことは無い。
そんなことは無いけど、交渉カードが増えることを喜ぶのは普通の人間の価値観だ。
「アンタの反応からして、ただのイタズラ魔じゃないんでしょこいつら。さて、腕がなるわねぇ」
というわけで、のした連中を連れて私達はスーッと姿を消す。
交渉カードは、豊富な方が強い。
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