31話――ショウカイを思案せよ!④
しかし彼女は「でも」と言葉を切り、悔しそうに歯噛みした。
「わたくしの両親や、他領地の貴族は……それを知り、領地を運営していましたわ。わたくしが知らなかった理由は、間違いなく貴族だったが故。でも、知ろうとしなかったのはわたくしの落ち度ですわ」
もしも彼女が、あるものでやりくりしていれば、お金を稼ぐ方法を知らなくても領地は経営出来るだろう。
だって彼女の言う通り、貴族だから何もしなくてもお金は手元にはいってくるから。
だから本質的には、「お金の稼ぎ方を知らなかった」からではなく、「持ってるモノ以上にお金を使ったから」あの惨状になったわけだけど……。まぁ、そんな事を言っても今更ね。
「それにしても……まぁ当然ですが、かわりませんわね」
そう言って、懐かしむように周囲を見るイザベル(真)。ここはいつも彼女がご飯を食べていた食堂では無いけど、懐かしいものなのかしら。
「ええ。幼い頃は、ここでコックの手伝いなどをしたり、メイドと遊んだりしましたから。カーリーを引き取ってからはめっきりそんなことも減りましたが」
「ボクで遊ぶようになりましたからね」
ぐさっとトゲを刺すカーリー。イザベル(真)は一瞬だけ(´・ω・`)ショボーンとした顔をするが、すぐに気を取り直したように語りだす。
「久しぶりにこの屋敷に来れて、嬉しかったですわ。……まぁ二度と、来れないのでしょうけど」
そう悲しげに呟くので……私は、ニンマリと笑みを作った。
交渉の余地を見せてくれるなんて、ありがたいわねぇ。
「んなこと無いわよ。なんなら、ここに住んだっていいわ」
「えっ、ちょっ、イザベル様!?」
私の発言に、素っ頓狂な声を出すカーリー。彼女にとってはトラウマだから、近くにいたくないとは思う。
思うけど、ビジネスチャンスは見逃せない。ごめんね、後で膝枕しながら耳掃除してあげるから許して。
「……何を? まさか、博打に出てもう一度入れ替わりの魔法を?」
「違うわよ。ってか、アンタにこの領地任せられるわけないじゃない。ちょっと改心したからって、この額の借金は普通にやってりゃ無理よ」
私の領地運営能力だって大したもんじゃないけど、レイラちゃんやカーリーみたいなチート能力持ちがいるからどうにか出来てる。
イザベル(真)に任せて彼女らの信頼を失ったら、一瞬で瓦解しちゃうわ。
「違うわよ。アンタの商会とうちの商会をつなげてくれるなら、カーリーにこれ以上手を出さないことを条件にこの館で雇ってあげるわ」
「も、戻れるんですのこの館に!?」
身を乗り出して食いついてくるイザベル(真)。私はニンマリと笑って、頷いた。




