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31話――ショウカイを思案せよ!③

「とはいえ、実体としましては……経営や人事、経理などはオズワルドさんの代から働いてらっしゃる方々が賄っておりますので、わたくしはデザイン作ることと広告塔しかしておりませんわ」


「……じゃあ、益々アンタを会長にした意味無いじゃない」


 とはいえ、ここまで磨き上げたのだから広告塔としてはなかなかの成果を発揮するだろう。オズワルドさんは、彼女の使い方が上手いのかもしれない。

 本当に彼女を商会長に選んだ理由は、オズワルドさんしか分からないだろうけど……取り合えず一つ、いいことを聞いた。

 私達が欲する物の一つが、手に入るかもしれない。

 心の中でほくそ笑みながら、私は背筋を伸ばして堂々と彼女に問いかける。


「ねぇ、アンタは……まだ戻りたいの?」


「むしろ、なんで戻りたくないと思うと思ったんですの?」


 端的に打ち返される。私と違って本当に自分の身体だもんね、そりゃ理屈を超えて戻りたい物だろう。

 でもそれは叶わない。


「アンタ、私に断られた時は……この話をして、入れ替わろうと思ってたんでしょ?」


「ええ。ただの村娘に戻りたくば戻れますし、そうでないなら商会長の座が手に入る。悪い取引ではないと思いますわ」


「その通りね。――誰の入れ知恵?」


 鋭く問うてみるが……イザベル(真)は、軽く肩をすくめた。そして目の前に置かれた紅茶を口に含み、少し眉に皺を寄せる。


「口に合わない?」


「ええ。三十秒は蒸らし方が足りませんわ」


「これは失礼、レディ。ぼくの淹れ方はお口に合わなかったかな?」


 三十秒とか、誤差じゃないの?

 ……という私の疑問は野暮なんでしょうね。すぐにユウちゃんが困ったような顔でイザベル(真)に謝罪する。


「茶葉ごとに、正解の淹れ方はあるんですわよ。……まぁ、いいですわ。さっきのお話に戻りますけれど、わたくしに入れ知恵をした者などおりませんわ。むしろ、今までの行いを反省したんですの」


 反省……ねぇ。

 こんな無茶苦茶な領地経営してた人に『交換条件』なんて概念がある方が驚きだから、誰かブレーンでもいるのかと思ったんだけど。


「経営……というのは、大変ですわね。ラピスラズリ商会の商会長になって、早一か月。まさかお金という物が、稼がないと手に入らないなんて思ってもおりませんでしたもの」


「アンタ、どういう生き方してきたのよ……」


「貴族ですもの」


 貴族でももっとましだわ。

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