31話――ショウカイを思案せよ!①
さて、お昼ご飯の時間。今日のメニューはミートソースパスタだ。
いつもなら、五人揃って使用人室で食べるところだけど……今日は一人、お客さんが増えている。
お客さんというか、お風呂からあがってホカホカのイザベル(真)のことなんだけど。
「屈辱ですわ……! あ、ありがとうございます」
カーリーにサーブされた昼食を受け取り、お礼を言うイザベル(真)。
その様子を見て、やっぱり気持ち悪いとでも言わんばかりの顔になるカーリー。あれくらいじゃまだ、許す気にはなれないのかしらねぇ。
(それにしても、大した心臓ね)
もう二度と戻れないことを改めて受け入れたイザベル(真)は、さんざん泣き喚いた後……こうして、一緒にお昼ご飯を食べている。
彼女いわく、私達に話したいことがあるんだそうだ。もしも私に再入れ替わりを拒否された時に、交換条件として提示する予定だった話が。
「それで……アンタ、今何してるの?」
昼食を食べながらそう問うと、彼女は意味ありげな笑みを浮かべてから腕を組んだ。
「何を隠そう、今のわたくしはとある商会の会長をやっているのですわ!」
「「「商会長?」」」
私、カーリー、レイラちゃんの声が揃う。原作の彼女から考えると、一番意味が分からない選択肢だ。
というか、よくたった四ヶ月で商会の立ち上げにこぎつけたわね。
正直意味がわからずポカンとしていると、更にイザベル(真)は爆弾発言を放り込んでくる。
「しかも! 服飾業界にて期待の新星! 新進気鋭、元気溌剌、勇猛果敢で栄枯盛衰な! ラピスラズリ商会の商会長ですわ!」
「えっ、あそこの!?」
更に驚くしか無い。取り敢えず四字熟語が完全に意味不明なことは置いといて……ついこの前話題に出た、ラピスラズリ商会の長をやっているとは。
原作の彼女に虚言癖は無かったし、カーリーもそんな話はしてなかったのでこの話は本当なんでしょうけど……。
「どうやってそんなことになったの……?」
「ふっ、それでは聞かせてしんぜましょう! わたくしが入れ替えられてから何があったのか! 聞くも涙、語るも涙の大冒険を! あれはそう、わたくしが目覚めた初日のこと……」
「あ、そういうまどろっこしいのはスキップして。要点だけまとめてちょうだい」
「貴女、わたくしに辛辣過ぎやしませんこと!?」
だってイザベル(真)、話が長い上につまらなそうなんだもの。
彼女は忌々しげな顔になるも、ため息をついてから私達に話し始める。




