30話――カラダ返せ⑥
だから彼女が何されても、あんまり私の心は傷まないのよね。
「それにしてもあのカーリーちゃんがあそこまで怒ってるなんてね」
なんとも言えぬ笑みを浮かべるユウちゃん。眉を八の字にして、困ったように肩を竦める。
彼女は我が家のお母さんでもあるので、よく怒るといえば怒るのだけど……ああいう怒り方をするのは初めてかもしれない。
「いや僕は怒られたことは無いよ」
「オレも無いッス」
「わたしはよく怒られますねー」
「「「どこから出た!?」」」
唐突に現れたレイラちゃんに三人同時に驚く。まさか呼んでもないのに現れるとは。
彼女はいつもどおり寝不足そうな目で、くすぐってるカーリーの方を眺める。
「でも妙ですね〜。原作の彼女、あんなんでしたっけ?」
「まぁ、そうね」
原作のイザベルは……贅沢好きで人を見下すところは同じだが、あんな状況になろうと決して人に頭を下げるような気質じゃなかった。
むしろああいうシチュエーションになったら、どうにかして懐柔しようとしてくる。本性を知っている人間相手であれば、暴れ出す。
更に付け加えると、本編のイザベルはもう少し狡猾だ。今日改めて本人と喋ってみると……だいぶ、原作から乖離があるわね。
「よくよく思い出してみたんですけど、原作のイザベルって……今のイザベルさんに似てません?」
「………………………今世紀最大の侮辱を受けたんだけど」
「そこまで言わなくても」
いや言うわよ。なんならレイラちゃん以外が言ってたら手どころか脚が出てる。そもそも、あんなネタキャラと似ていると言われて喜ぶ人がいるというのか、いやいない(反語)。
「私、あんな見栄っ張りの贅沢好きの考えなしの傲慢キャラ?」
「考えなしは割と。そこじゃなくて、イザベルの良い面の方ですよ」
いい面……?
「アニメ版は前代未聞のネタキャラでしたけど、原作では仮にも中ボス。相応の相手として描かれてたじゃないですか」
レイラちゃんの説明を受けて、少し思い出す。言われてみれば、イザベルにも良いところがあったかもしれない。
「というか、真さんの方からは……原作にあった執念と闘争心が感じられないんですよね」
「私さっきぶん投げられそうになったんだけど」
「勝てると思った時、だいたいの人は好戦的になりますよ」
それもそうかしらね。
なんてあのイザベル(真)について考察していると……しゃわー、と何やら水が出る音が。
私達四人で原因と思われる方を向くと……そこでは、涙を零しながら変な表情で固まったイザベル(真)が。
……思いっきり、股間を濡らした状態で嗚咽を漏らしていた。
「いっそ、殺して……」
ここまでやってもやりすぎと思わないのは、ある意味人徳かしらね。
「いやまぁ、十分やり過ぎっすよ?」
マリンの至極真っ当なツッコミが入り、私達はイザベル(真)を眺める。
さて、この子をどうしましょうか。




