30話――カラダ返せ⑤
「あはははははは! か、カーリー! やめ、やめなさいですわ! やめてくださいな!」
「おー、イザベル様じゃないですけど楽しいですねこれ」
「あははははは!! も、もうやめ、もうやめてくださいな! あははははは!」
めっちゃくすぐるカーリー。楽しそうに笑みを浮かべ、イザベル(真)を笑わせている。
羽ペンでくすぐられたことは無いけど、涙を流しながら笑うイザベル(真)を見てると……まぁ、されたくは無いわね。割と私、くすぐったがりだし。
カーリーはもう一方の足もブーツを脱がせ、素手でくすぐる。
「あはははははは!!! やめっ、やめてくだあはははははは!!」
ジタバタするイザベル(真)。取り敢えずこのまま、カーリーが満足するまで放置しておくかしらね。
なんてのんびり眺めていると、背後からユウちゃんが話しかけてきた。
「女神、良いのかい? あの体は……元々は君のモノなんだろう?」
「え? あー……うん」
確かに今カーリーがくすぐってる体は、私が16年間使っていたもの。
でも別に、私の身体……という感覚は薄い。
「私、転生から目覚めて六年と少しくらいしか経ってないからね。前世の身体が本体で、どの身体も仮住まいみたいな感覚なのよ」
前世では、二十代後半まで生きた。大した人生じゃなかったけど、やっぱり二十数年生きた身体の方が「自分の身体」という感じがする。
そのため、ベラ・トレスの肉体にそこまで執着は無いのよね。
「一度死ぬと、価値観が変わるものよ。ユウちゃんも1回経験してみるといいわ」
「遠慮しておくよ。今のこの世を楽しみたい」
「生き返れるとしても?」
「そうだね。今のところ、僕が死ぬまでに……叶わないことは無さそうたから」
無欲、というよりも凄い自信。この世に未練なんて残さないとばかりね。
まぁでも、私ももう一回転生するのは嫌かもね。流石に飽きるわ。
「ああ、それとあともう一つ、イマイチ自分の身体って思えない理由があるのよ」
「なんすか、姐さん」
いつの間にか横に来てたマリンが首をかしげる。
「あの子、私の記憶の十倍くらい可愛いのよね」
「仮に自分の身体じゃなかったとしても……この状況でそれ言えるの凄いッスね」
ちょっと引いた様子のマリン。でも事実だし。
髪型の件を置いておいたとしても、肌もツヤツヤでメイクも綺麗。服装も独特なのにバッチリ似合ってて、しかもスタイルもちょっと良くなってる気がする。
いくら私が「16歳の身体なんて何もしなくてもお肌ツヤツヤで最高〜」とか思ってなにもしてなかったのを差し引いても、よくもここまで磨いたものだ。
はっきり言って、別人としか思えない。




