30話――カラダ返せ①
204部分
そして数十分後、我が家の庭。
私はイザベル(真)と、真正面から向かい合っていた。
「ふっふっふ……ここで会ったが百年目! いざ尋常に、イザベルの名を懸けての戦いですわー!」
「さっきは毒とか使うのかと思って焦ったッスけど、正面から殴り合いみたいッスね。それなら安心ッス」
ホッとした様子のマリン。本編の性格からして、イザベル(真)はからめ手とか下手くそだし最初からわかってたけどね。
しかし原作最強の身体能力、イザベル・アザレアの実力は……ほかならぬ彼女の方が良く知っているはずだ。だっていうのに私とタイマンを張るってことは……何か策でもあるのかしらね。
私は少し警戒していると……イザベル(真)は両腕を上げて柔道や柔術に似た構えを取った。
「おや、あれは……」
何かを知っている様子のユウちゃん。私が彼女の方を向くと、イザベル(真)はニヤリと笑みを浮かべた。
「説明してくれても構いませんことよ」
「第一、第二騎士団で正式に採用されている流派の柔術、その構えに随分と似ているね。確かソルデン流だったかな」
「よく知っておりますわね。そうですわ! 隣の家に住んでいたフィルゥンおじさんから、半ば強制的に習わされましたわ!」
その話を総合すると……あのおじさんって騎士か何かだったってことなのかしら。確かに二メートル近い筋骨隆々のおじさんだったけど、そんな話してなかったし……。
私が「へー」くらいに思っていると、ユウちゃんはちょっと驚いたように目を開く。
「フィルゥンって……三代前の、第一騎士団の団長さんの名前だね。そんなビッグネームに教わったのか」
「そうですわぁ! わたくし自身の肉体の強さは、わたくしがよく知っておりますわ。しかぁし! わたくしはこの四か月間、血が滲むような努力をしてここまでなりあがったんですわ! ぬくぬくと貴族をしている貴方に! わたくしは負けたりしない!」
フィルゥンおじさん、騎士団長だったんだ……。言われてみれば、たまに屈強なおっさんがフィルゥンおじさんを訪ねてきていたけど。
私がフィルゥンおじさんに思いを馳せていると、イザベル(真)はヒートアップしていく。
「苦節四か月……! ついに、ついに恨みを晴らす時が来ましたわ! 如何に強靭な肉体といえど、鍛えていなければ無意味! 貴方を倒してイザベルの名を取り戻し! そしてカーリーに落とし前をつけさせますわ!」
身を低くし、こちらへ突っ込んでくるイザベル(真)。




