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29話――身体を求めて三千里⑧

 なんかいつの間にか現れた店員さんに、各々注文を頼んでいく。いつの間に、私の背後に回り込んでいたのかしら……なかなかやるわね、この店員さん。

 私もコーヒーのお代わりを頼み、取り合えずユウちゃんとマリンを座らせる。


「では取り合えず、こっちのメイドのメイクをさせてくださいな」


「いやどさくさに紛れて、自分の欲望を果たそうとしてるんじゃないわよ」


 どうもマリンが一番お気に入りらしい。当のマリンは、私へ対する実力行使を匂わせたからかとんでもなく警戒しているけど。

 彼女は羨まし気にマリンとユウちゃんを見ると、大きくため息をついた。


「羨ましいですわ……! というかそもそも、わたくしの時はこんなに人を雇うお金なんてありませんでしたわ! どうやったんですの!?」


「アンタと違って、ちゃんと領地を経営してるからよ」


「きぃー!」


 でもマリンとユウちゃんを気に入るなんて、そこの趣味は合うみたいね。


「というか、どうやってんのよその髪。私の髪質じゃあ、そんなくるくるにはならなかったと思うんだけど」


「我が商会の新商品ですわ。棒なんかに巻き付けた後に塗るだけで、一日この髪型を保てる便利クリームですわ!」


 それはまぁ……普通に便利な商品ね……。

 というか、商会……? イザベル(真)が、商会に勤めている……の、かしら? いや、でもこの子が商会に勤めている様子が一つも想像できないんだけど……。

 私が困惑している間にも、彼女は話を進める。


「ま、まぁ良いですわ。……わたくしは元に戻りたいんですわ! なんで廃人になるんですの!」


「そんなこと言われても、ボクの魔法の仕様としか……」


「というかそんな危険な魔法! 普通使いますの!?」


 あー……私も似たようなキレ方してたわねぇ、懐かしい。

 そして何度か似たような会話を繰り返したのち……イザベル(真)は絶望した顔で、うなだれた。


「つまり……わたくしは……二度と、イザベル・アザレアに戻れない……? わたくしは……い、一生平民として過ごすんですの……!?」


 声が震えるイザベル(真)。ま、まぁ元に戻れるっていう希望を持ってきてたんだから、ショックを受けるのも――


「だったらぁあああ!!! わたくしが実力でイザベルの座を取り戻すまでですわぁ! さぁ、さぁ勝負ですわベラ・トレス! このわたくしと、真のイザベルの座をかけて――」


「お客様、あまり騒ぐようでしたらお外へ出ていただけますか?」


 ――まぁ、そうなるわね。

 というわけで店員さんからつまみ出されたイザベル(真)と共に、私たちもお店を出るのであった。

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