表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/312

29話――身体を求めて三千里⑤

 まぁ原作のイザベルも、お礼くらいは流石に言っていたような気がする。

 しかしカーリーは首を振ると、むすっと口を結んでそっぽを向いた。


「いえ、感謝しているイザベルさんは見たことありませんでした。『感謝の言葉を述べている自分』に酔っているだけで……」


「うぐっ……」


 ちょっと思い当たる節があるのか、勢いをそがれるイザベル(真)。彼女は話題を変えるように咳払いすると、今度は私の方に視線を向けてきた。


「そ、そんな過去のことはどうでもいいですわ。昨日までの自分は別人!」


「無茶苦茶言うわねぇ。過去を顧みないことは、前向きとは違うのよ?」


「シャラップですわ! とーにーかーく! 今向き合うべき事態はそれでは無いでしょう!? ほら、カーリー! さっさとわたくしを元に戻しなさいですわ!」


「嫌です」


 キッパリと言い切るカーリー。ぶんむくれて、そっぽを向いたまま……なんというか、生ごみでも見るような目でイザベル(真)を睨みつける。


「今ボク、前世今世合わせて一番幸せなんです。なんで貴方っていうストレス源の元で、わざわざ働かなくちゃいけないんですか?」


「何を言ってますの! わたくしもこの人も、身分が違って今大変ですのよ!? ほら、ベラさんも何かおっしゃりなさいな!」


 私の方に水を向けるイザベル(真)。しかし私が何か反応する前に、カーリーはやれやれと首を振った。


「戻せませんよ」


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」


 たっぷり三十秒ほど硬直し、ようやく言葉を絞り出すイザベル(真)。そんな彼女をあざ笑うかのように、カーリーは彼女の目を見た。


「だから、戻せませんよ。ボクの魔法で入れ替わった生き物を、もう一度戻したら……例外なく皆、廃人になりました」


「………………………………………………………………………………………………………………………………い、一体何を言っているんですの?」


 目を真ん丸にして、わなわな震えるイザベル(真)。彼女は思いっきりカーリーにつかみかかると、ぐわんぐわんと揺らし出した。


「何を、何を言ってますの!? もどっ、もども、戻せない!? はぁ!? なん、そんな……はぁああああ!?」


「あっはははは!!! イザベルさ~ん? キャラ、崩壊してますよ~??」


 アンタもキャラ崩壊してるわよ、カーリー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ