4話――暴れん坊悪役令嬢④
「すいません、聞きそびれてたんですけど命はどうします?」
「任せるわ。でもできる限り苦しめて」
「あいあいさー」
カーリーが雑魚を倒しに行ったので、私は改めてジェイソンに向かい合う。
今はとにかくむかっ腹が立っているからね。手加減なしでぶちのめそう。
腕を振り上げるジェイソン。私は動きやすくなった脚を振り上げてその拳を迎撃した。
衝撃が骨身に走る。しかしジェイソンは私の渾身の蹴りに応えた様子もなくにんまりと笑った。
「オイラの身体に打撃は効かねぇぞぉ!」
今度はその場で飛び上がり、トラマスクばりの空中後ろ廻し回転蹴りを決める。しっかり顔面に入ったのに応えている様子が無い。むしろ嬉しそう!
「ははははは! 馬鹿め、ジェイソンの肉体は改造済み! こいつはすべての衝撃を吸収して快楽に変えてしまうのだ!」
得意げに叫ぶオルカ。そんな漫画の噛ませ犬みたいな能力を持ってるなんて。
っていうかそれ、ただMなだけじゃ……?
「打撃が効かないなら斬撃よ!」
その辺の雑魚が取り落としたナイフを蹴り飛ばし、同時に短剣を拾う。
蹴ったナイフが顔に当たり、視界が隠れた隙に斬りかかったが……ジェイソンは一切表情を変えぬまま、手のひらで受け止めた。
「いっ!? 嘘!?」
「オイラには打撃が効かないんじゃねえ! 衝撃は全部効かねえんだ!!」
何そのチート特性! 無効とかゲームじゃないのよ!?
ゴム人間を初めて見た神なりさんはこんな気持ちだったのかしら。とりあえず近接パワー型に見えるので距離を取る。
しかしジェイソンは大きく振りかぶり……両手を打ち合わせた。いわゆる拍手、しかしそのとんでもない衝撃で私は吹き飛ばされそうになる。
「音響兵器――ってきゃあ!!」
私が怯んだ(ピヨった)隙に、ジェイソンがタックルをかましてくる。なんとか躱して背後の壁にぶつけたけれど、ダメージは無い。
モンファンのティガナックスよりタフね。
「んっとタフね!」
「タフって言葉はジェイソンのためにある」
どや顔をかますオルカ。私は舌打ちしながら、魔力を集める。
「まぁそれはさておき……面倒ね、奥の手使おうかしら」
「奥の手ぇ? そんなんなくてもオイラのイチモツは奥まで届くぞぉ!」
「品性下劣、容姿醜悪! ああもう怒りとは別の理由で鳥肌がたつ!」
今度は前蹴り。私はそれをジャンプして躱し、空中で一回転して踵落としを脳天に直撃させた。
さすが作中最高最強の身体能力。漫画みたいな動きが簡単にできる。
しかしやはりジェイソンは効いている様子が無い。可笑しそうに笑うと、私の脚をつかんで大きく口を開けた。
「うーん、美味しそうだぁ。へへへ、おいらのはデケェぞぉ」
「知るかキモい消えろ変態!! ウイン!」
懐から紙風船を取り出し、ウインに変化させる。彼女が風の刃をジェイソンに繰り出すと、スパッと勢いよく切れて血が吹き出した。
それに驚いたか力が緩んだため、脱出する。指ごと切り落とそうとしたのに、紙で切ったくらいのダメージしか入ってないわ。
「ん? なんでおいらの指が?」
不思議そうにしているジェイソン。仮説は大当たり、これでダメなら一酸化炭素中毒で倒さなきゃいけないから焦ったわ。
「今のが効くならやりようがあるのよ! エンベッド・デュオ!」
拳を握りこみ、ウインを思い切りぶん殴る。すると彼女の体躯が二メートル近くまで大きくなり、鳥型の頭を持った風の魔人へと変貌した。
私の奥の手の一つ。召喚した使い魔を魔人に進化させる魔法だ。
「行くわよ!」
ウインを連れてジェイソンに殴りかかる。相手は先ほどの攻防で攻撃が効くはずが無いと高をくくっているのか、一切避けようとしない。
――それが命取りになるとも知らずに。
「面白い!」、「続きを読みたい!」などと思った方は、是非ブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が速くなるかもしれません!
是非よろしくお願いします!




