表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

199/312

29話――身体を求めて三千里④

 メニューが想定よりもはるかに多いことで有名なお店で、スタドがオシャレなティーン向けだとしたら、こっちは少し上の二十から三十代向けくらいのイメージ。

 何にせよ、騒ぎになった向こうよりはまだまともに会話出来るでしょうね。


「ここで良い?」


「どこでもいいですけれども、相変わらずカーリーの魔法は酔いますわね。もっと優しく出来ないんですの!?」


 私は酔ったこと無いけど、転移酔いなんてあるのね。

 カーリーはイザベル(真)の言うことはスルーし、そっぽを向いた。ただいつもの彼女なら言い返すだろうことを考えると……やっぱりいい関係じゃなかったってのは本当みたいね。


「さっさと中入るわよ」


 入店を報せるベルを鳴らしながら、お店の中へ。店員さんたちはイザベル(真)の姿にギョッとしているけど、それをスルーして指を三本たてる。


「三人よ」


「あ、空いてるお席にご自由にお座りください……」


 お言葉に甘えて、窓際の席へ。コーヒーを頼んでから、改めて私達は向き合った。


「で……あんた、結局イザベルってことでいいの?」


「ええ、その通りですわ。貴方のほうがよくご理解しているのではなくて?」


 そりゃ確かに……碌な鏡が無かったからまじまじと見たことは無かったとはいえ、十六年連れ添った私の肉体。見覚えがないなんてことはあり得ない。

 ただ……それを差し引いてもこの縦ロールがあまりにもあんまり過ぎて、現実を受け入れ難いのよねぇ。


「コーヒーでございます〜」


「あら、ありがとうございますわ」


 店員さんに一礼したイザベル(真)は、優雅な仕草でコーヒーを受け取る。

 そして店員さんが下がった後に……これまた絵になるような美しい所作でゆっくりカップを持ち上げた。


「普段は紅茶党ですが……たまにはよろしいですわね、こういうのも」


「確かにここのコーヒー、美味しいのよね。カーリー、お砂糖いる? ……カーリー?」


 普段から角砂糖は三つ入れるカーリーにそう問うと……彼女は口をあんぐりと開けて、イザベル(真)の方を見つめていた。

 まるでお化けでもみたような表情で。


「イザベル(真)様……が……お礼を言った……!?」


 あ、ショックを受けるところそこなんだ。普段どれだけ酷い扱いを受けていたかが察せられるわね……。

 今夜はベッドで抱きしめてあげよう……そう決心していると、イザベル(真)はクワッと目を開いて怒り出す。


「失礼じゃありませんこと!? わたくし、前からお礼くらいは言っておりましてよ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく拝見させていただいてます [気になる点] 更新頻度が早いのは大変嬉しいのですが 1話1話が短く繋げるて読むと感じないのですが 毎日更新されたのをリアルタイムで見ると若干のテンポ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ