29話――身体を求めて三千里②
私とカーリーの二人って時点で、私達が屋敷に揃ってからカムカム商会を制圧するまでに起こした出来事を知っているということ。
そしてその間に起きた出来事なんて一つしかない。
私とイザベル・アザレアの……魂が入れ替わるという事件しか。
「後はまぁ私とカーリーの秘密って言ったらそれくらいしか思いつかないしね。清廉潔白に生きてるし」
「カムカム商会の件とか、場合によっては懲罰ものですけどね」
まぁ貴族が民間の商会をぶっ潰してるわけだからねぇ。
「でもここまで引っ張ったなら……もしかすると改心してたりするのかしら」
「あのイザベルがそんなことしますかねぇ。どっちかっていうと、ボクらに復讐の方が彼女らしいといえば彼女らしいですよ」
……そっちの方が可能性は高いわねぇ。
なんて益体も無い話をしていると、カーリーがある一方に目を向けた。私も同じようにそちらを見ると……なんというか、凄い格好の女の子がこっちへ歩いてきていた。
黒いロングワンピースに、金があしらわれたバッグ。成金趣味と言われても仕方が無いようなレベルの豪奢なアクセサリーたち。
でもまぁ、服装だけならそこまで変じゃない。一番目を引くのは……その髪型。黒髪だっていうのに、腰まである縦ロールになっている。
「……えっ、あれ?」
「いやボクよりもイザベル様の方が詳しいんじゃ……」
いやあんな格好の女の子は知らないし、あんな攻めた髪型の女の子なんて産まれてこの方一度も見たこと無い。
……いやまぁ、よく見たら顔立ちに薄っすら元の私の面影はある。メイクが上手すぎるのと、髪型のせいで殆ど別人だけど。
そもそも私の髪ってだいぶ硬かったから、あんなヤバい髪型に出来なかったと思うんだけど……。
「あれ……です、よね」
「そう……でしょうね。私ってあんな可愛くなるのね」
ちなみにめっちゃ可愛いし、何なら好みの顔立ちになっている。人間、メイクで化けるものなのね。
でもまぁ……確認も出来たし。
「帰りましょうか」
「あ、帰るんですね」
「アレが改心してるわけないし、それなら私らに協力させるのも無理だし」
万が一、イザベル(真)以外が私たちの秘密を知ってた場合は面倒だから確認しに来ていたわけだけど、アレは……うん、私の身体に入ったイザベル(真)でしょうね。
どうやってあんな服装が出来るのか……とか気になることもあるけれど、それ以上に関わらない方が良いという予感しかしない。




