28話――鏡よ鏡④
面倒ごと、厄介ごとであるのは間違いないわね。
私は軽くため息をついて、手紙を見る。
「……うーん、でもなんかアホっぽいから気づかないんじゃない?」
「いやまぁ、その説は濃厚ですけど……もし万が一気づかれたら……」
「それなら、キッパリと会えない旨を伝えるしか無いわね」
これが格上の家だったら意地でも会わないといけないところだったけど、相手は幸い男爵家。無礼だなんだは発生しない。
来ても「体調不良」とかなんとか言って、会わなければいいだけだ。
「まぁ、断りの手紙でも書けばいいのね?」
「いえあの……最後まで読んでください」
「?」
彼女に促された通り、追伸部分にも目を通すと――
『追伸、先日……我が領の女騎士団が壊滅したばかりで、治安がよろしく無いので来られる場合は注意してください』
――なんて、書かれていた。
「ちょっ……ええ……?」
普通、招待したいって言ってる相手にこんなことを言うだろうか。
とはいえ、女騎士団が壊滅……ねぇ。
「この騎士団、貰えないかしら」
まさか壊滅と言っても、全員殺されたとかではあるまい。数名でも生き残っていれば……箱の代わりにある程度のノウハウが手に入る。
どうせ人数を揃えるには、時間がかかる。それならばノウハウがある人間を先に雇った方が良い。
普通の騎士は、辞めないし……辞めたとしたら、よほどの事情がある。それ故にノウハウがあってやる気がある人は殆ど市場に放流されない。マングーで捕まえた元騎士は、どう考えても普通に騎士なんて出来るような奴じゃなかったしね。
しかも騎士っていうのは、領地内の事情に詳しい。そのせいで、他の領地の騎士を軽々に雇うと大概トラブルになる。ガースリーでさえ「流石に、騎士のやり取りは……」って言ってるしね。
「そう言うと思ったんですよ……だから大変と言ったんです」
「壊滅させられた騎士団、でしょ? 上手いこと言ったら無料ないし格安で貰える気がするのよね」
「でも役に立つのかい?」
ユウちゃんが疑問符を浮かべ、首を傾げる。
「本隊ならまだしも、女騎士団だからね……。男女問わず、一度でも敗北したら二度と剣を振るえなくなるという人はいる。まして女騎士となれば、壊滅させられた時に性的な虐待を受けていないとも限らない。これまた男女問わずだけど、性的虐待を受けた騎士は二度と剣を振れないよ」
「ユウちゃんは平気じゃない」
「ぼくは特別だよ」




