28話――鏡よ鏡②
大慌ての彼女は、二通の手紙を握っている。まず間違いなく、それが今回の騒ぎに関係あるだろう。
私はあぐらをかいてベッドに座り、彼女に手を差し出した。
「見せてちょうだい」
「は、はい」
渡された手紙を開き、内容を確認する。以前、彼女は『絶対に断れない相手』としてガーワンと陛下の名前をあげていた。しかし今のマングーは、ガーワンが失脚してガースリーが実権を握っている。故に決して融通の利かない相手ではない。
となると、こんなに慌てるのは国王陛下からの招待状か――そう覚悟して開いたが、その宛先には見たことの無い名前が書かれていた。
「ジーナ・カナリバー? って……あのジーナ?」
「おや女神、知ってるのかい?」
「知ってるも何も、預言書に出てくる子よ」
ジーナ・カナリバー。原作ゲームである『ダンプリ』の登場人物にして、主人公のライバル兼友人キャラだ。
最初のチュートリアルのボスも務めており、よくも悪くも『ダンプリ』の中では非常に存在感がある。
実力自体は中の下、味方ユニットになった後は……最終的にバックダンサーに入れるかどうかというライン。しかしユニットとしての性能以上に、主人公の心の支えとしての役目が非常に強い。
「良いキャラよね。……私、『ダンプリ』の女キャラの中では好きな方よ」
とにかくメンタルが強い。何にもへこたれず、いついかなる時もノブリス・オブリージュを忘れない。悪い意味でノブリス・オブリージュを重要視するイザベル(真)と違い、本当の意味でのそれを守っている。
唯一の欠点としてはイザベル(真)の信者であるところだが……それもイザベル(真)が失脚した後は自力で立ち直り、主人公を励ますというメン強っぷり。
特にその立ち直るシーンは、原作ゲームの中でも屈指の名シーンであり……原作ファンの中には、あのシーンで彼女を好きになったという人は多い。
そんな、ジーナからのお誘いの手紙だ。
「いいじゃない、何が大変なの?」
私が問うと、カーリーは何とも言えない微妙な表情になってしまう。
「いやあの……えーっと、取り敢えずそうですね。原作のイメージのまま行くとショックを受けるというか……」
もにょもにょと歯切れが悪いカーリー。彼女は大きくため息をつくと、首を振ってから手紙を見るように促してきた。
「取り合えず最後まで読んでください。それで大変なことが分かると思います」




