28話――鏡よ鏡①
昼下がりの休日。
私はベッドの上、ユウちゃんに膝枕されながら小説を読んでいた。
「いやー、良いわねぇこの物語。姫と騎士なんて無茶苦茶ありふれてるのに……こんなに美しいラブストーリーになるなんて」
「ふふ、ぼくのお気に入りは気に入ってくれたかな?」
「うん。やっぱりユウちゃんはいいセンスしてるわ」
王子様系の女の子をやっていると、女の子が良いと思う物を嗅ぎ分ける嗅覚が鋭くなるのかしらね。
なんて思いながら、読み終えた本を胸の前に置く。見上げると……執事服を着ているのに、視界を埋め尽くすユウちゃんの巨乳。この子も大概、属性過多よねぇ。
「大丈夫? 足、痺れてない?」
「女神ほどではないけど、ぼくも丈夫だからね。あと一時間同じ体勢でも平気だよ」
流石ユウちゃん。
私は感心しつつ、平和な時を楽しんでいると――扉の向こうから、あわただしい足音が聞こえてきた。
私とユウちゃんは目を見合わせる。今日は休日――そう決めて、カーリーたちにも言い含めてある。
我が家は休日と決めたら、家事もしない(自分がしたい場合は除く)と決めているのにこの慌ただしさだ。余程のことがあったに違いない。
「あーあ……丸一日、みんなを愛でて過ごすつもりだったのに……」
「まぁまぁ、女神。半日とはいえ、ゆっくりできたじゃ無いか。それに即応が必要な用事だったとしても、一日が完全に潰れるということも無いだろう。さっさと終わらせて、またゴロゴロしよう?」
「そうねぇ」
この後はカーリーを抱き枕にしてお昼寝をする予定だったのに、それがパーになったのは少し不服だ。
私はよっこらと立ち上がり、ウインに扉を開けさせる。
「イザベル様ー! あ、どうも」
扉を開けたウインにお辞儀したカーリーが部屋の中に入って来た。そして二通の手紙を持って、私達の前へ。
「あー! イザベル様、またユウさんの膝枕でのんびりしてましたね!? 僕を抱き枕にする約束はどうしたんですか!」
「それはこの後するつもりだったのよ」
「……ナチュラルに抱き枕にされることは受け入れてるんだね、カーリーちゃんは」
クスクスと笑うユウちゃん。言われてみれば、以前ほどカーリーは抱き枕を嫌がらなくなったわね。
それを指摘されたカーリーは少し恥ずかしかったのか、カッと頬を赤くして目を逸らした。
「な、なんでもいいですから。それよりもイザベル様、大変です!」
大変なのは見たら分かる。




