26話――DRAGONTAIL⑤
「「「「!?」」」」
筋骨隆々で白いヒゲを生やしたお爺さん。身長は私より一メートルはデカい……つまり二メートル六十センチはある。そしてその腰に提げられているのは、人間大の大剣が二本。
こんなの、敵の強さに疎い私でも分かる。
まじで強いヤツだ――
「援護!」
――私は一言だけそう叫び、カーリーの前に出る。それを見た皆の動きは素早かった。まずカーリーが転移で戦いやすい森へ移動させ、ユウちゃんは即座に周囲をダンジョン化、マリンは距離を取っていつでも牽制出来るように。
そして私は一歩踏み込み――一応相手を殺さないように服に『エンベッド』はせず――顔面に蹴りをぶちかました。
ヒールにワンピースだからあんまり力は入らなかったけど、それでも私の蹴りだ。衝撃波が周囲に飛び散り、木々が消し飛ぶ。
しかし、お爺さんはビクともしない。私の蹴りを手のひらで受け止め、飄々と笑っている。
「……!?」
「ふぁっふぁっ。こりゃあだいぶ元気のいいお嬢さんだ。ワシの皮膚が貫かれたのなんかいつぶりか」
見れば、確かに私のヒールが彼の手のひらを貫いていた。そこから血が流れるが……お爺さんは私の足をぐっと握り捕まえる。
凄い力……イザベルの肉体でなお、これを振りほどくには手こずりそうね。
「レディの脚を掴むなんて。年齢によらず変態なのね」
笑みを浮かべ、少し眼光鋭く睨みつける。しかしお爺さんは負うように笑うと、腕に力を込めて来た。
「ふぁっふぁっ。最近のレディはトークの前に足を出すんか。そっちのほうがはしたなくないかのぅ」
そしてグッとこちらを倒そうと体重をかけてくるので、私は脚で押し返す。彼はヒゲを撫でながら、楽しそうに私の軸足を見てきた。
「ワシの体重を片足で押し返すか。ふぁっふぁっ、こんな娘っ子がいるとは世間は広いわい」
(いや、何言ってんのよ。もうこっちゃ全力よ!?)
片手で私を押し返すなんて、巨大化したガーワン並みの膂力がある。それでいてお爺さんの顔は左右対称では無い……つまり、人造人間では無い。
普通の人間が、普通に鍛えて私を押し返している――
「――それで、目的は? いつまでも私の足を掴んでるけど……パンツでも見たいの?」
「ふぁっふぁっ。娘よりも年下の娘っ子の、パンツなんて見ようと思わんよ」
そう言うが早いか、お爺さんが腕を振り上げて私が持ち上げられる。見ようと思わんとは言われたけれど、念のためスカートを押さえつつ……眼球をめがけてヒールを突き出した。
驚いたような顔になり、私を離すお爺さん。彼の手から力が抜けたので、空中でとんぼを切って地面に着地する。




