26話――DRAGONTAIL④
それでも魔道具の寿命を大幅に伸ばせるなら、十二分に凄いと思うけど……レイラちゃん的には納得出来ないのね。
レイラちゃんはもう一度欠伸をすると、うんと伸びて踵を返した。
「ってわけで三日くらい寝ますね。あふぁふ。その魔石、小さいモノにしか使えなくて……まだ灯りくらいが実用の範囲だと思います」
「いや十分よ、ありがとねレイラちゃん」
彼女はそのまま部屋を出ていったので、私はさてと再度腕を組む。カムカム商会と全面的にやり合う前は領法を交渉の手札にしようと思っていたけど……あの時もこの実態を見破られていたら、交渉にならなかったかもね。
「何にせよ、棚から牡丹餅に縋るわけにもいかないし。ガースリーの所がもう少し騎士団がカチッとしたら……そっちに助けてもらおうかしらねぇ」
内政しながら学院に通うのはしんどいし(というか学院は全寮制だし)、たぶん入学後も皆に手助けされながら私はここに戻ってきて領地経営をするだろう。
でも今のように毎日は出来ない――だからそれまでにどうにか、ある程度の道筋を立てておかないと。
私が気合を入れ直したところで、ノック音が。レイラちゃんはノックなんてしないし、今日はメイドさんを呼ぶ日でもないから……ユウちゃんね。
「どうぞー」
「失礼するよ、女神。今日は来客の予定は無かったと思うんだけど……あってるよね?」
いきなり本題から入るユウちゃん。少し焦っている様子が見受けられる。
私は執務机から立ち上がり、窓の方を見た。
「……あら、人影が二つ。貴族かしら」
「でもここ最近に来た紹介状は、ワナガーカから来たモノ以外は皆断ってます。徒歩でマイターサに来ようなんて物好きもいませんし……誰ですかね」
私たちが首を傾げていると、マリンはピリッとした空気で背筋を伸ばした。彼は勘が鋭い……こんな雰囲気になったということは、あの人達は剣吞な理由でこの家に来たということだ。
「『組織』が真っ向からくるわけも無し。……さぁて、鬼が出るか蛇が出るか。私が迎えに行くわ、皆は何かあった時にバックアップお願いね。マリン、先にレイラちゃん起こしてきて」
「ちょっと待ってください、イザベル様」
カーリーがやれやれと首を振り、私をいさめ――
「いきなり喧嘩腰にならないでください。別に敵対するとも限らないんですから。あそこにいる人が誰だろうと、取り合えず普通に会話して――」
「――お邪魔」
――窓の、前に。
いきなり『デカい』男が出現した。




