26話――DRAGONTAIL①
「お金が足らないわ」
「えぇ……」
ガーワン邸宅の騒動からはや四ヶ月。次の徴税日を目前にして、私は腕を組んでいた。
新生カムカム商会の経営は順調。ガースリーとの協業も上手く行っている。
トミサに作った信金も、今や四店舗まで拡大。地方の商会……までは行かない程度の規模感のお店を取り込み上手く回りだしている。
また信金が出来たことと、カムカム商会という箱があるおかげで銀行のような物の発足までもう少し。しかもガースリーに頼んで地方債を引き受けてもらったから、資金調達もしやすくなった。
だが、それでも尚……お金がたらない。
「まあ当然といえば当然よね。止血しないで輸血しまくってるみたいな状況だもの」
「止血……ってことは、支払いが多いってことッスよね。ここ数ヶ月は公共事業も抑えてるのに領地としてそんな払ってるんスか?」
私の執務室で掃除をしてくれていたマリンがこっちを向く。そろそろな夏場ということもあり、今日はミニスカへそ出しメイド服だ。スカートの下からチラッと見える、レッグホルスター。パンチラならぬガンチラだけど、どの層に需要あるのかしらね。少なくとも私にはあるわ。
ちなみに彼が銃を手に入れたり、公共事業が削減する羽目になった件に関しては、『組織』も絡んでくるから……そのうち、番外編とかで。
「メタいですよ、イザベル様」
「おばか、地の文を読まないでよ」
まぁそれはさておき。私は咳払いしてから、書類を振る。
「闇金の利息返済が重たいのが一つ。そもそも、無茶な公共事業が多かったからそれの後始末が一つ。領法が少ないから……それに伴う税収の低さとかが一つ。いくつか理由はあるけど、大きいのはこの辺ね」
最後の一つに関しては、マータイサに領地騎士団が無いことが影響している。
どんな領地も、必ず領地騎士団を置く理由は……第二騎士団は国の法律にしか従わないから。仮に領法を破ってる人間がいたとしても、彼らはそれを取り締まらない。取り締まれない。だから現状、どんな領法を作っても、取り締まる人間がいないから無意味ということ。
「ここ数ヶ月は、領地騎士団まで手が回らなかったのよね……それに箱もないし」
「箱?」
首を傾げるカーリーに、私は簡単に説明する。
「十人しかいない会社に、二十人の新人が来たとしても、扱いきれないでしょ。でも千人いる会社に二十人入社しても普通の光景。大量の人間を採用するには、大量の人間が必要なのよ」
それが箱。騎士団を運営するノウハウが無い以上、せめてそこの人員を確保しないと。




