25話――MMR~マジで無敵な領主たち~⑨
この世界には報道機関は無い。あっても精々新聞で、報道機関を作るのはかなり難しい。ではどうやって対策するのか。
「具体的に即効性のある対策は無いわ。でもこういう噂が広まるのは、民衆が今の生活に不満を抱いた時。――頑張って、景気よくするしか無いのよね」
「……そのための、梅やその他協業ですか」
「そうね。元々、私達の治める領地は災害が少ないところよ。だから必要なのは経済的な活況。他領から人を増やすのではなく、自領地内で人が増えるような政策」
一つの領地でやるよりも、二つの領地で協力できるに越したことは無い。
要するに私たちは、今まで通りのことを一生懸命やる以外に出来ることは無いってことなんだけどね。
「とはいえ、色々と噂を流したり……逆に噂を消したりもするわ。その辺はキッチリと情報共有しながらやっていきましょう」
「は、はい」
こくこくと頷くガースリー。
取り敢えず何とかなりそうね。
(それにしても……)
結局、『組織』の目的が見えてこなかった。フレディもレイラちゃんの拷問で口を割らなかったし、ガーワンも目的まで知っている様子じゃなかった。
最初は単なる一反社くらいかと思ってたけど、貴族を転生させてるとなると最悪の可能性が頭をちらつく。
(原作における、ダンスバトル世界)
アレを発議したのは、国王だったはず。
もしも――もしもだけど、『組織』が国王の容姿を乗っ取って発議していたとしたら。
世界をダンスで勝負が決まる世界にしてしまったとしたら。
(無限に容姿が良くて運動神経も良い『人造人間』を製造できるあいつらが、簡単にすべての戦いを牛耳れる)
一人ひとり、時間をかけて乗っ取る必要は無い。ダンスで勝てば、商会すら牛耳れる。貴族を乗っ取っても自由経済の部分に介入するのは難しいけど、商会のヘッドをダンスで奪ってしまえば経済すら自由に動かせる。
そんな……五秒考えれば破綻しそうな世界を、アイツらが作ろうとしているのなら。
(無茶苦茶な世界になった理屈が、割と説明できちゃうのよねぇ……)
こうなってしまうと、笑えない。阻止できなかったら、いよいよ以ってダンスバトルでそいつらから権力を奪い返す必要が出てくる。
(あー……本当に嫌)
原作通りの世界を踏襲するなら、あと一年でそんなイカれた世界になる。
そんなことは、させない。
「でもまぁ、その前に私は借金を返さないとなんだけどね」
まだまだ、八桁単位の負債がある。
世界崩壊を防ぐのは、その後ね。
「それじゃあ、皆、頑張るわよ!」
「「「おー!」」」
ロット以外の全員で、拳を天井に突き上げる。
一年後まで、『組織』と絡まないで済めばいいんだけど。




