25話――MMR~マジで無敵な領主たち~⑧
「……じゃあ私が、王子の側近になることのメリットはありますか? 今日話した事の秘密は守ります。私にもメリットがありますから。でも、正直原作のように動きたくはありません」
キッパリとぶっちゃけるロット。いいわねぇ、これくらい思い切りが良いと話を進めるのもちょっと楽しいわ。
私は笑みを作り、うんうんと頷く。
「そうねぇ……国の転覆を防げるのよ? って言いたいところだけど、取引はウィンウィンが私の信条。ちゃんとあるわよ、見返り」
自信満々に笑って見せる……けど、何にも考えてない、どうしよう。こいつが転生者ってわかったから、咄嗟に王子の側近になってもらう必要性が出たからこんなこと言い出してるわけだけど……見返りなんて考えてないわよ。
口から出まかせでどうにかするしかないわね。
(金銭はいらないでしょうし、地位も不要。……なるほど、異世界転生者を駒のようにしようとして失敗するダメ貴族って苦労してたのねぇ)
仕方ないから私は彼に近づき、胸を張る。そして後ろのレイラちゃんを手で示す。
「学院卒業後になるけど、アンタの好きな『賢者の石』を作ってあげるわ。そしてその後、アンタの身体に埋め込んだ――今、『組織』が勝手にやってる改造じゃない。正規の『改造』を施してあげる」
中二病が喜びそうなワードを取り合えず詰め込んでみた。悪の組織に対抗するために、正義の組織から改造を受ける――なんて、めちゃくちゃエモいでしょう?
私は乙女だから男心は分からないけど……男の子ってこういうのが好きなんでしょ?
「…………」
あ、ちょっとソワソワしてる。良かった、割といい感じっぽい。
私がホッとしていると、彼はキリっとした目になって私を見た。
「分かりました、全身全霊をかけて王子の側近になります」
「ん、交渉成立ねぇ。……レイラちゃん、良い? いい素材でしょ」
「はい、大丈夫です。……楽しそうなので」
改造できると聞いてニコニコしているレイラちゃん。何なら今すぐやりたそうにしているけど、前払いだとあんまり信用出来ないから後にしてね。
「分かってると思うけど、王子の側近になって守ってあげてね。もし既に入れ替わってたら私に報告して。対応を考えるから」
「分かりました」
「あと、私は超級の実力は無い。いいわね?」
「……まぁ、分かりました」
凄まじく嫌そうな顔で頷くロット。でも取り合えず、こっちはOK。
後は――
「ガースリー、私達は風説の流布を止めるわよ」
「は、はい。……要するにこのスキャンダルが広まるのを止めようってことだとは思うんですが、具体的にどうするんですか?」




