25話――MMR~マジで無敵な領主たち~⑤
それだけじゃない、この問題の面倒くささはそれを超えた先にある。
昨夜、ガーワンがペラペラと私に話した内容で気になったことが一つある。
それは……この肉体に転生した――というワード。
「もしかすると『組織』って、自由自在に転生させられるのかも」
ガーワンはなんかギャアギャア言ってたけど……要約すると「能力が低くて皆んなから相手にされてなかった。でも転生してイケメンになれたから人生バラ色になった」って感じ。
だけどガーワンだけが特別で転生させて貰えたとは限らない。そもそも人造人間はイケメン……というか容姿が整ってて顔が左右対象なわけだけど、イケメン限定とは思えない。
というかガーワンは人造人間だけどガーツーらを産ませてるわけで、マリンの肉体のように生殖機能を奪われてるわけでもなさそう。なんて諸々考えると……。
「『組織』は誰でも自由に、どんな体にでも転生させられるのかもね。そうなると、人を乗っ取ったり出来るのかも」
「ちょ、ちょっと待ってくださいイザベル様! 話が飛んでついていけません! 転生ってなんですか!? そもそもさっきの不思議なお名前は!?」
私の言葉を遮るように割り込んでくるガースリー。そっか、この子には転生の件も言ってないわね。
ことここに至っては、この子も巻き込んだ方が良さそうだし説明しておきましょうか。
「そんじゃ簡単に説明するわね」
というわけで改造人間と人造人間について改めて説明し、さらに『組織』についても話す。そして今回の件で改めてわかった奴らの目的についても。
「ってわけで、たぶん貴族の乗っ取りだと思うのよねー」
「転生とか言ってましたもんね。でもイザベル様、人造人間に転生させて若返り……とかじゃなくて、乗っ取りと思ったのはなんでですか?」
「お金を稼いでその先にあることですからねー。世界征服って無難な野望じゃありません?」
カーリーの疑問に答えるレイラちゃん。彼女の言う通りありきたりな目的だとは思う。
ただまぁ、私がそれを目的だと断じたのにはもう一つ理由がある。
「あとシンプルにそれが可能で、やられるとマズいから警戒しなくちゃなんないってのもあるわ。万が一王子が『組織』のやつと入れ替わったとしたら、下手したらアニメで私が破滅するシーン……アレを成功させなきゃならなくなるのよ」
私の言葉にロットが渋い顔になる。渋い顔っていうか、殆ど諦めみたいな顔だ。
「……アレをですか。でも確かに……」
「……お二人は未来が分かるんですか?」
転生の件……は、どう説明したものかしらね。
私はちょっと考えてから、ぽんと手を打つ。
「詳しく話すと新しい概念を持ち込むことになるから、ちょっと違うけど未来について書かれた預言書を読んでるみたいなものと思って」




