25話――MMR~マジで無敵な領主たち~④
アニメの記憶が蘇ったか、肩を震わせるロット。私はそんな彼の肩に手を置くと、目を合わせた。
「アンタ、さっき超級並に強いって言ってたじゃない。たかだか貴族令嬢ごときにそんなに怯えなくていいのよ?」
「……アニメの活躍を見ていて、ビビらない方が凄いですよ」
彼は力が抜けたようにその場にへたり込む。そして胡座をかくと、肩をすくめた。
「分かりました。その代わりちゃんと秘密にしておいてください、私が転生者だってこと」
「一応、名前を聞いとくわ」
「猿原純平です」
観念したような顔になるロット。彼は名前を言うと、ガースリーの方を見た。
「彼もそうなんですか?」
「いいえ。私だけよ」
なんでかロットは隠してるので……とりあえずカーリーとレイラちゃんについては伏せておく。その状態で、私はロットから一歩下がって腕を組んだ。
「それじゃあ話の続きをしましょう。結論から言っちゃうと、昨夜の敵はガーワンよ」
「ガーワン様が?」
眉間にシワを寄せ、首を傾げるロット。驚いたというよりも、意味を理解しかねているという顔だ。
意味も何も言葉通りなんだけど。
「あり得ない……でしょう。確かに腕が立つのは存じていますが、あくまで貴族としては。年齢もありますし、せいぜい三級程度なのでは?」
「まぁ……素の祖父だとそんなものだと思います」
素の、というところにイントネーションを置いたガースリー。ロットは彼の顔を見ると、ピンと来たように目を開く。
「素のってとこは……魔道具か何かですか?」
「当たらずと言えども遠からずね。ガーワンは改造人間だったのよ」
「……なんで剣と魔法のファンタジーから、SFに転換してるんですか?」
私に言われたって知らないわよ。
「『組織』って名乗ってる連中がいてね。そいつ等がどうも人間と魔道具をくっつけて改造人間作ってるみたいなのよ。アンタも一回戦ったんでしょ?」
さっき彼が王家直属に配置されるようになったのは、改造人間を倒したからっていう話だったと思うんだけど。
私の問いに、ロットは渋い顔をする。
「確かに倒しましたけど……アレって『改造人間』だったんですか。殺しちゃったせいで情報が出なかったんですけど……っていうか、技術的に出来るんですかそんなこと。てっきりダンジョンから出た魔道具のバグで出て来たものかと」
「私の作った賢者の石が悪用されてるみたいでー」
「本当に災害ですね」
レイラちゃんがのほほんと言うと、ロットは的確にツッコむ。というかレイラちゃんが盗まれた賢者の石が悪用されてるんだったわね。
忘れかけてたけど、元凶の一人じゃないこの子。私はレイラちゃんのこめかみをグリグリしてから、ため息をついた。
「ガーワンはその『組織』にお金を流してたっぽいのよね。で、自分の体も改造してもらったと」
「ああ……な、なるほど。それは更に込み入って面倒ですね」
「でしょう?」




