24話――大乱闘のあとしまつ⑦
ロットを除く部外者が出て行ったので、私はホワイトボードを取り出す。するとその光景を見て、再びロットがギョッとした表情になった。
「じゃあまずは梅の話と、アンタの所にある騎士団の隙間についてよ」
そう言いながら『ライト』にマングーの領地を描く。そこに数日前に聞いた、この領地の騎士団が来ない場所を記入していく。
「住んでる人と、実際に騎士団が来ない穴場を襲ってた盗賊団から聞いたからほぼ間違いないわ。予算の都合ってのは分かるけどね」
「……これは」
彼はまだ領地を継いだばかりでデータなんて持っていない。それでも思う所があるのか、神妙な顔で私の話を聞いている。
「うちの領地は……第一騎士団と第二騎士団に殆ど任せてるから、逆に穴は少ないわ。でもアンタんところは」
「はい。領地騎士団がそれなりの規模なので、国の騎士団は最低限しか人員が割かれてません」
普通ならそっちの方がいいかもしれない。連携もしやすいし、普通の騎士団がカバーできないような敵なんてそんなに出てこない。
でも……こうやって穴が出来るとなれば、話は別。
「しかしウチの騎士団の規模ではこの範囲を完全にカバーさせるのは難しいですね。騎士団の増員を行うまでは冒険者に頼るしか……」
顎に手を当てながら言うガースリー。そう、冒険者を雇うしかない。でも一般的に、一人の冒険者を雇うには三人分の騎士団を雇うリソースが必要と言われている。何故なら、冒険者なら誰でも良いってわけじゃないから。
正社員と派遣社員で考えたらいいんだけど、正社員並みの業務が出来る派遣社員って中々いない。
業務だけならまだしも、倫理観やコンプライアンスまで正社員並みに守ってもらわないと困るわけで……それが出来る優秀な人材を雇うとなれば、そりゃ普通よりも金がかかる。
「そんな金は無い――と言いたいのよね? そこで商会を作るのよ」
「……は?」
私の提案にキョトンとするガースリー。そんな彼の表情を見てから、私はニヤリと笑う。
「簡単な話。この辺では梅が採れるのよ。それをマータイサで加工して、周辺の領地に売る事業を今考えているのね? その商会をアザレア家とレギオンホース家の連名で作るのよ。そうすれば普通に冒険者を雇うよりも相場が安く雇えるわ」
さっきの三倍の件は、貴族が雇うから相場が高くなるという事情もある。貴族からの依頼ってだけで(コンプライアンスとかに厳しくて面倒だから)敬遠する冒険者も多いからね。
でも、普通に商会を経由すれば……相場も多少安くなるし、何より冒険者を集めやすいし、経費として落ちるから別の予算を割り当てられる。




