24話――大乱闘のあとしまつ⑤
「ただまぁ、今回は身内も協力的やし……普通に聴取したらお縄でええやろ。なぁ、ジュリアン」
「……そうだな。ご協力感謝します」
三人が礼をするので、私たちも応える。これからガーワンの話を聞いたらすぐに引っ立てられるのかしら――と思っていると、紫髪の騎士が何故か訝しい顔で私の方を見ていた。
「あの……失礼ですが、そちらの方は?」
その視線にガースリーも気づいたか、三人に質問する。すると憮然とした表情のジュリアンが、背後に立つ紫髪をこちらに紹介してくれた。
「ロット、ご指名だ。前へ来い」
「はぁー、流石はお目が高いでんな。彼はつい最近王家直属部隊に配属されたんですが、その中でもとびきり有能な男でしてな。もはや超級レベルの実力があるんですわ」
(ロット?)
何故か聞き覚えがある気がする。なんでだろう……言っちゃなんだけど死ぬほど世間知らずの私が、第一騎士団に所属する騎士の名前なんて知るわけが無いのに。
前に出てきたロットは、それなりにやりそうな雰囲気。剣を腰にさげ、背筋の伸びた男。紫色の髪にはパーマがかかっており、やや垂れ目なのも相まって一見すると優しそうな風貌をしている。
しかしなんというか、女好きそうな雰囲気を纏っていて……イケメンなのにちょっと残念な感じね。
という人物評をしたところで、私に電流が走る。こいつの正体を思い出したからだ。
冷静に考えたら、この世界で私が知ってる人間なんて一種類しか無い。それは――
「お、お初にお目にかかります。ガースリー伯爵、イザベル子爵。私は第一騎士団、王家直属部隊所属のロット・ランスです」
――ゲーム本編の登場人物!
しかもロット・ランスと言えばイザベルほどでは無いけれどかなりのネタキャラ。能力は高いのに思考がほぼ調子に乗った陰キャそのもので、痛々しいなろう主人公とまで言われていた。
顔芸もなかなかで、叫び声でMADまで作られている。
(はぁ……まさかここで会うとは)
後々、王子の護衛として学院で主人公とは出会うはず。イザベルの過去話なんて無かったから、今の私がちゃんと本編通り進めているのか分からないけど……この二人って面識あったのかしら。
「が、がースリー・レギオンホースです」
「イザベル・アザレアですわ」
取り敢えずご挨拶。私たちが礼をすると、ロットはさらに訝しげな顔に――というか、そわそわしたように目を泳がせた。
ますます意味が分からないでいると、カーソンが笑いながら彼の背を叩く。
「こいつはつい最近、身体に魔道具を埋め込んだ奇怪な輩を取り押さえた功績を称えられて出世したんですがな、とにかくまぁ女に目が無くて。誰彼構わず口説くんですわ。……とはいえ、流石にイザベル子爵は高嶺の花過ぎるか」




