24話――大乱闘のあとしまつ④
「イザベル・アザレアです」
「が、ガースリー・レギオンホースです」
私たちが挨拶し、彼らの前に座る。一応私たちは貴族で、彼らは平民。ある程度こちらから動かないと、彼らもやりづらいでしょう。
「すいません、本日はお時間をいただきありがとうございます」
ジュリアンが数枚の書類を出しながら話し始める。
「通報がありましたので、本日は参りましたが……既に拘束されているとのことで」
「はい。既に今朝来られた第二騎士団の方々に引き渡し済みです」
日の出と共に通報し、今は第二騎士団の面々に囲まれて……この屋敷の地下牢に入れられている。その地下牢には幾人もの貴族が捕らえられており、拷問の後もあったので……そこでちょっとだけ私がぶち切れちゃったんだけど、その話はまた今度。
ただそのおかげで写真以外の証拠も出てきたので、スムーズに罪に問えそうで助かったわ。
「ただ伯爵家……それも領地をまかされてるレギオンホース家のことですからな。ワイらも『はいそうですか』とすぐに捕まえるわけにはいかんわけでして。まして、通報された方が身内となれば……ねぇ」
へらへらしながらも聞きにくいことを平然と言ってくるカーソン。なかなかこっちは食えないおっさんみたいね。とはいえまぁ、概ね彼の想像通りだしなんとも言えない。
ガースリーの顔を見る。彼にはこういうことを聞かれた時に話すべき内容は既に伝えてある。
「その……実は今回の件には深いわけがありまして。昨夜は我が家で夜会があったのですが、その時にたまたまこれを発見してしまいまして……」
そう言ってガースリーは、私たちが既に証拠として提出している写真を取り出す。ガーワンが貴族を拷問している時の写真だ。
「オレは居ても立っても居られなくなり、父に直談判しに行ったのですが聞き入れられず……そのことが祖父の耳に入り、危うく殺されそうになったのですが」
「たまたまわたくし達がその現場に立ち会い、正当防衛という形で制圧させていただきました」
ガースリーの言葉を拾ってそう説明すると、ジュリアンとカーソンはふむふむと頷きながら聞いている。ディランは頑張ってメモを取ってるわね。
「先ほどもお話ししましたが、地下牢には何名か未だ捕らえられていた人がいましたので……」
「ええ、存じ上げております。それらの件を考慮すると、ガーワン様の実刑はほぼ免れません」
ジュリアンが厳めしい顔で言うと、ディランは胃が痛むのか顔を青くして頷く。
「れ、レギオンホース家は……議会にも強い影響力のある家でして……その……」
「まぁ、もみ消そうと思えばもみ消せるやろからなぁ。せやからワイらが来たんやし」
ああ、なるほど。わざわざ騎士団なんて来るから何事かと思ったら、もみ消させないためってのもあったのね。




