24話――大乱闘のあとしまつ②
まぁでも一人、ユウちゃんの知り合いなら少し気も楽ね。写真と拷問用の地下室という動かぬ証拠があるとはいえ、伯爵家を訴えるなんて中々気合いのいる話だし。
私がそう思いながら紅茶を飲んでいると、扉をノックされる音が。
「い、イザベル様。お客様でございます」
「ありがとう、今行くわ。――カーリー、皆のこと透明に出来る?」
「出来ますよ」
「私も出来ますよー。魔力が見えない方が良いでしょうし、こちらの薬を飲めば皆透明になれます!」
何故か横から入ってくるレイラちゃん。……アンタ、徹夜してたのに元気ねぇ。
「透明になる魔法薬か。素晴らしいね、流石はレイラちゃんだ。ただ……これ、何か副作用は無いのかい?」
「副作用なんてありませんよ。ただ服は透明にならないので、全裸にならないといけないだけで。ちなみに透明になってる人同士は互いの姿が見えます」
「重大な副作用じゃないかな!?」
私の代わりにツッコミを入れてくれるユウちゃん。助かるわー。
「ボクの魔法だって! ボクと同レベルの魔法使いじゃないと見破れませんよ!」
「まぁそうでしょうね。それならカーリーで十分。皆透明になって付いてきて」
「「「「はーい」」」」
カーリー、マリン、ユウちゃん、レイラちゃんが元気よく返事する。大丈夫だとは思うけど、もしもこれで向こうが私を拘束してこようとしたら……彼女らの力が必要だからね。
透明になった皆を引き連れ、私は扉を開ける。
さっき私を呼んだ人だろう、三十歳くらいの綺麗なメイドさんがこちらに一礼してきた。
「こちらでございます」
「ありがとう」
彼女に連れられて歩き出すと……向こうから執事に連れられたガースリーもこちらへやって来ていた。
すぐに彼はこちらに気づき、そわそわとぎこちない様子でこちらに頭を下げてくる。
「お、おはようございますイザベル様」
「おはようございます、ガースリー伯爵」
人前なので猫を被って対応すると、ガースリーは顔を赤くして俯いてしまった。
「あう、は、伯爵はやめてください。……でも本当に、今日から伯爵を名乗って良いんでしょうか」
どうも自分が伯爵と呼ばれることが照れくさいらしい。
そして彼は疑問そうに首を傾げているが……それに関しては、ガーワンの件も関係なく名乗るしか無いんだから仕方が無い。
「ガーツーも捕まるんだから、アンタが暫定的に家督を継ぐしかないじゃない」
「そ、それはそうなんですけど」
本来の計画ならば……ガーワンを起訴し、ガーツーは『経営実態が無い』としてリコール。その上で暫定的にガースリーが家督を継いで運営……その間にマイターサへの様々な妨害を未然に防ぐつもりだった。




