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23話――領主様”拷問”の時間です⑤

「それをするなら、私も迎え撃つ。何度も言うようだけど、私達はガーワンを失脚させた先にしか未来が無いからね」


 私の発言に……カーリーとユウちゃん、そしてマリンが眼光を鋭くする。

 それを見たガースリーは一瞬怯むが、首を振ってから気を持ち直した。


「祖父は裁かれるべきだと思います。そして……イザベル様の言う通りですね。オレの甲斐性の見せ所です。一から、領地を経営するために必要な人材をかき集めます」


 決意を新たにするガースリー。まぁぶっちゃけ……殆どの人は誰が当主なのかに拘りは無いと思う。末端に行けば末端に行くほど社長がどんな人物でもあんま関係ないし。

 小さい中小企業ならいざ知らず……私が働いてた会社なんて百人くらいしか社員がいなかったけど、それでも自室にこもりっきりで社長の顔なんて知らなかったしね。

 側近は総入れ替えして、後は継続ってのが一番丸いんじゃないかしら。

 ……なんて言うのは、流石に野暮ね。


「イザベル様、感謝します。何も知らないまま生きていたら、オレはきっと碌な人間になれなかった」


「そう? それなら良かったわ」


 彼は一度ガーワンを見ると、憎悪に満ちた顔になる。


「はい、やっぱり……何度考え直しても、この怒りと憎しみは消えません。せめて祖父が一言でも否定してくれていたら……」


 最後の言葉が、ガーワンへの感情の全てなのだろう。誰だって、身内を断罪したくない。


(結局、ガーワンが私達を舐め腐ってたことが原因よねぇ)


 ガーワンの立場からしてみれば、世間を知らない孫につい最近領主になったばかりの小娘。警戒する要素なんて殆ど無い。

 今まで何度か武力反乱も鎮圧して来たのだろうから、最後の力技の鎮圧も判断も責めるべきでは無い。


「ガースリー、アンタは相手を舐めないようにね」


「勿論。オレもこれからは気合をいれていきますから。……あ、あの、それはそうと……イザベル様って……こ、婚約者とかって、その……」


「イザベル様! 見てください!」


 唐突に顔を真っ赤にしてもじもじしだしたガースリーだったけど、それを突き飛ばしてカーリーが私の手を引いた。


「あの穴の中! フレディが一体になりました!」


「あら、全滅したのね」


 ガーワンと同じシステムなんだったら、一人に戻ったフレディは生きているはず。

 それなら、ちゃんと生捕りにして改造人間の取り調べに使わないと。


「カーリー、こっちに引き戻して。ユウちゃん、キツいだろうけど穴を閉じるのお願いできる? レイラちゃん、フレディを任せたわ。心をへし折っておいて」


「任せてください!」


「勿論だよ女神」


「実験してるだけなんですけど、なんで私が拷問係みたいな扱いされてるんですかね?」


 不服そうなレイラちゃん。いやアンタの実験は誰がどう見ても拷問でしょ。

 私は腕を組み、ガースリーの方を見た。


「で、ガースリー。今からビジネスの話するわよ」


「び、ビジネスですか……?」


 鳩が豆鉄砲でも食らったような顔になるガースリー。

 最初から私に利があるからって言ってるんだからビジネスの話をするに決まってるでしょうに。


「梅の輸入の件や、騎士団の連携、あと余裕が出たら出資してもらいたいし。やることは山積みよ」


 私が指折り数えながら言うと、ガースリーは少し目を回したように苦笑いする。

 そんな彼のおでこを軽く弾き、私は笑いかけた。


「じゃあ行くわよ」


「は、はい!」


 元気よく返事するガースリー。しかし彼の顔は少し陰っていた。

 その表情に少し心当たりがあったので、私は踵を返しながらヒラヒラと手を振る。


「十年早いわよ、私の婚約者なんて。私のハーレムになら入れてあげるわ」


「……いえ! いつかいい男になって……イザベル様に! オレの婚約者になって貰います!」


 彼の顔を見ずに言ったのだけれど、随分と張りのある声が返ってきた。

 やる気があるのはいいことね。

 なんて思いながら、私は皆を連れて屋敷に戻るのであった。



「でもイザベル様、十年後はもう行き遅れですよ?」


 比喩表現に決まってるじゃない!

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