22話――討滅のイザベル⑤
私が言うと、レイラちゃんは懐から魔法石を取り出した。カーリーと違ってなんの魔法石か分からない私が首を傾げていると、レイラちゃんはそれをガーワンの口の中に放り込む。
「何を投げ入れたのよ」
「大量の水が出る魔法石です。お腹たぷたぷにして動けなくするのがいいかなと」
まあ体内に重りを入れたら身動き取れないものね。両足も折れているし、一旦はそれでいいかしら。
……いや元の大きさに戻った時に死んじゃわないかしらそれ。
「それじゃあ筋弛緩剤でも……いや普通に効かなそうですね。さっきの穴に落とします?」
「こいつあの穴よりデカいわよ。って、あ痛っ」
立ち上がろうとして、足に痛みがはしる。そういえば、足をくじていたんだった。
その場に座り込んだ私を見て、レイラちゃんが驚いたように目を丸くした。
「えっ……い、イザベルさん怪我したんですか!? イザベルさんが……イザベルさんが!?」
「そりゃ私だって足をくじくことくらいあるわよ。レイラちゃん、回復魔法使えたわよね? お願いしていい?」
私が彼女に頼むと、レイラちゃんは呆然とした表情をしながら私の足に触れた。
「ホントにちょっと捻ってる……え、何があったんですか?」
「ガーワンが上から手を振り下ろしてきてね」
「はいはい」
「私はこうやって真下から蹴り上げたんだけど、堪えきれずに足をくじいちゃったのよ」
その説明を聞いたレイラちゃんは口を開けて、なんとも言えない微妙な顔になった。
「この場合はこんな馬鹿みたいにデカい化け物の攻撃を食らってその程度のイザベルさんに驚けばいいのか、イザベルさんに少しでも傷をつけられたガーワンを称賛すればいいのか……」
「取り敢えず私を褒めときなさいよ」
なんであんなのを称賛するのよ。
レイラちゃんは私の手に触れたまま、魔力を流す。それだけで痛みがだいぶ引いてきた。
「回復魔法ってやっぱ便利ね」
「今のは回復魔法じゃなくて魔力を流しただけです。それだけで回復するのは、ドラゴンとかペガサスに見られる特徴ですね。殆ど化け物です」
なんで罵られたのかしら今。まぁなんにせよ、治ったからいいけど。
私は今度こそ立ち上がって、肩の方へ歩いていった。
「じゃあこれで腕を折ればいいわね」
「目覚めません?」
「同時にやればいいでしょ。足は折ってあるし、腕さえ折れば芋虫になるし。じゃあレイラちゃん、向こうの腕折って」
軽く二、三回跳ねながら言うと……レイラちゃんが再度微妙な顔になった。
「か弱い乙女である私が、こんな巨人の腕を折れると思ってるんですか!」
「余裕でしょ?」
「まぁはい」
じゃあ今のやり取りなんだったのよ。




