22話――討滅のイザベル④
雄叫びか悲鳴か、もはや分からないような声をあげながら腕を振り下ろすガーワン。それをギリギリまで引きつけてから回避し……片足で地面を蹴り、ガーワンの懐に飛び込んだ。
そして両手を地面につき、腕力だけで体を跳ね上げる。
「ふっ!」
「ぬあっ!?」
ガーワンはそれに気づいて横から私を掴もうとするが――掴みに来た腕をさらに踏み台にし、顔面の前まで跳躍する。
「イザベル……イザベルぅぅぅぅうううう!!!」
「ぎゃーぎゃー喧しいのよ! この愚図! 三流以下の悪党!」
咆えるガーワン。私はそれを無視して、足を振り上げた。顎を掠るように――ユウちゃんが、フレディにやっていたように。
あれが増えない程度の力でやっても気絶させられたんだから……こんな巨大化した奴が相手でも、私が本気で蹴りを入れれば流石に効くでしょ。
幸い、勝手にでっかくなってくれたから当てやすいしね!
「はぁああああ!」
掛け声と共に、私の蹴りがガーワンの顎にさく裂する。尋常じゃない衝撃波と、轟音が周囲に響いた。無理矢理口を閉じさせられたガーワンは舌を噛みちぎり……一撃で顎が砕けたのだろう。口内から滝のように血を流し、真上に吹っ飛んだ。
背中から倒れこむガーワン。その目は完全に白目を剥いており、手足をピクリとも動かさずそのまま気絶した。
「っとと」
私は何とか片足で着地したけど、バランスを崩してしりもちをついてしまった。こんな短時間のうちに二回も尻もちをつくなんて、この体になってから初めての体験ね。
私は大きくため息をついて、その場に寝っ転がった。
「あー……疲れた」
まだ夜明けまでは遠い。こいつが朝まで目覚めないでいてくれたら楽だけど、どうかしら。でも取り合えず……殺さずに済んだわね。
これの方が後々の動きが楽になる。
私がこの馬鹿の拘束方法を思案していると、遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「イザベルさーん。どこですかー」
「……レイラちゃん? おーい、ここよここよー」
私が上半身だけ起こして呼びかけると、彼女はいつも通りのマイペースでゆっくりこちらへ歩いてくる。
「向こうはカーリーさんとユウさん、あとマリンさんで十分そうだったんで来ました。ってかぶっちゃけ、木に火をつけて投げ入れるのに飽きました」
「ぶっちゃけるわねぇ……」
彼女はガーワンを見上げて、目を光らせる。
「生け捕り出来たんですね! いやー、ありがとうございますイザベルさん! これでまた実験がはかどります!」
「いや気絶したは良いけど、どうやって拘束したもんかと悩んでるのよ」




