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22話――討滅のイザベル②

 情けない声をあげるガーワン。大人のオスがこんなに情けない声で鳴くんですね。

 なんて言ってる場合じゃない。このままこいつが逃げると、街の方へ向かうかもしれない。


(そうなると、人が死ぬわね)


 腐っても貴族、改造人間になろうとレギオンホース家のトップであることに変わりは無い。このまま街で暴れても、騎士団はこいつを止めることは出来ない。

 今、こいつを止められるのは……同じく貴族であり、こいつの不正の証拠を握る私だけ。


「あーあーあー……殺さないで済ませようと思ったのに」


 そっちの方が楽だから、殺すつもりは無かったのに。まぁでも、ことここに至っては仕方がない。

 殺して、止める。


「嫌だ、私はなったんだ! 全てをひれ伏させる超人に! こんなところで死ぬはずが無い、死ぬはずがない!」


「いいえ、死ぬわよ。アンタは死ぬ」


 全力で走る。ガーワンは全長六十メートルほど……亀の歩みでも、大きい分前へ進む。

 だからまずは、機動力を削がないと。


(良い蹴りは良い足場から!)


 横に回り込み……まだ無事な方の膝に、押すような前蹴りをぶちかます。

 衝撃波で空気が撓み、真横にスライドして吹っ飛んでいくガーワン。彼は再度光って巨大化するが……見事に足が変な方に折れ曲がった。これならもう、足は巨大化出来ない。


「これで動きを止めてくれたらいいんだけど……そううまくも行かないか」


「ひいっひいっ!」


 悲鳴を上げながら、腕だけで這いずるガーワン。生き汚い……とも言えないわね。しぶといと言うべきかしら。

 どっちにせよ、面倒だから倒さないといけないけど。


「さて、と。じゃあ次はうなじね」


 巨人といえばうなじ。まぁそうでなくとも、これだけデカい奴を倒すとなれば首を落とすのが一番手っ取り早い。

 私がガーワンの上に跳び乗ると……彼は声にならない声で悲鳴をあげながら、のたうち回った。


「たす、助けぇぇぇええ!」


「きゃっ! ちょっと、大人しくしなさいよ!」


 突然のことで振り落とされた私は、地面に転がって強かに腰を打つ。

 原作最強の肉体といえど、ちょっとは痛い。腰をさすりながら片膝を立てて体を起こしたところで――真っ直ぐ、ガーワンが手のひらを振り下ろしてきた。


「ッ!」


 マズい、マズいマズいマズいマズいマズい!!

 全身の細胞がアラートを鳴らす。肌が粟立つ、毛が逆立つ。

 私の体が隠れるほどの巨大な手のひら。そうだ、忘れていた。こいつは今、全長六十メートルもあるのだ。

 関節を狙うならいざ知らず、こうして真っ向から体重で来られると――


「舐めんじゃ……無いわよ!!!!」

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