22話――討滅のイザベル①
「くそっ、くそくそくそっ!」
「はあああああああ!!!!!!!」
ウインの風で空に押し出され、飛び蹴りをガーワンの腹に叩き込む。二十メートルくらい吹っ飛んだガーワンは、光ってまた大きくなった。
大きくなってダメージがあまり通らないのか、すぐに起き上がるガーワンだけど……腹を抑えており、その動きは鈍い。しかも上半身や左足はちゃんと巨大化してるのに……さっき私が砕いた指と膝はそのままの大きさだ。
こいつ……一回破壊された部位は、巨大化しなくなっちゃうのね。
「なら簡単な話……全身、粉々にしてやればいいってことね」
「やってみろ! 出来る物ならなぁああ!」
腕を振り上げ、振り下ろす――それだけで普通ならば、必殺となる一撃。まるで自分が小さい虫にでもなったかのように錯覚してしまう。
でもそれは、錯覚。あくまでも錯覚。
私は虫じゃない、悪役令嬢イザベル・アザレア。
「生意気言ってんじゃ、ねーわよッ!!!」
振り下ろされる握りこぶしを寸前で回避し、目の前に落ちたそれの衝撃波で吹き飛ばされそうになりながら……私は廻し蹴りで親指をへし折る。
「んがあああああああああああああ!!!!」
のたうち回るガーワン。その肉体が光り、さらに巨大化する――が、起き上がらないので追撃。私はその辺で折れた木の幹を掴み、顔面の方へ駆け上がった。
そして眼前にいる私に驚いたガーワンが目を見開いたところで、眼球に木を思いっきり突き刺した。
「うがわあああああああああ!! ひぉい! 目が、目があああああああああ!」
「三分間待ってくれてもいいのよ~?」
「来るなっ、来るなぁぁああああああああ!!!」
両腕を狂ったように振り回すガーワン。私はそれらを回避しつつ、飛び蹴りで肘を破壊する。
「うわっ……でっかいわね。もう超大型巨人くらいあるんじゃないかしら」
見上げるほどの大きさになったガーワンは、血と涙を流しながらぐちゃぐちゃになった顔で後ずさりしていく。体は六十メートルほどになったけど……その巨体を片足じゃ支えきれない。地面をはいずりながら、私から必死に遠ざかろうとする。
まぁ、逃がさないけど。
「ちょっと待ちなさいよ。もうここまで来たら『組織』は私も狙うでしょうし、そうなると一体でも改造人間はいない方が良いからアンタのことを逃がすわけにいかないの。大丈夫よ、殺さないから」
「こ、殺されてたまるか!」
「だから殺さないっての、本当よ? ただ……自分から『殺してください』って言いたくなるような地獄を見せるだけだから」
「もっと嫌に決まってるだろうが!!! うぎっ、ひぃ! う、腕が動かん! 目が見えん! く、来るな、来るなぁあああああ!!!」




