21話――増殖! 真の危機!?⑨
私は軽く首を回して、彼女の指示を聞く。
「で? どうすりゃいいのよ」
「でっかい穴を掘ってください。ただ、敵を一か所に集められると尚いいですね」
大きく両手を広げながら言うレイラちゃん。敵を一か所に……ってなると、囮を使う必要があるわね。
そして今、敵が殺したいのは……私かしら。
「おっけー、それじゃあユウちゃん、地面の下に空洞を作ったり出来る?」
「それくらいなら問題無いけど……女神、自分を囮にするつもりかい?」
「というか、私達のところに敵は集まるでしょ。幸い、相手が人質にしたそうなガースリーはここにいるんだし」
私がそう言うが早いか、フレディたちがやってくる。でも今私たちが森にいるからか、一度にやってくる数はそんなでも無い。思考を共有してるってわけじゃないみたいね。
それなら――
「せぇ……のおっ!」
――目の前にあった木を思いっきり蹴飛ばし、吹っ飛ばす。その勢いで後ろにあった木々が倒れていき、道が出来上がった。
これを全方位にやれば、私達のいる場所が見えやすくなるわね。
「…………い、イザベル様の足きれー」
「ガースリーさん、現実逃避しないでください。まぁイザベル様の足が綺麗なのは当然なんですけどね!」
「いや後方後方彼女面してないで、カーリーさん。貴女が転移を遣えばすぐに木々は消せるでしょう」
レイラちゃんが言うと、カーリーは手をあげて中指と親指を合わせた。
「もう準備してますよ。一か所に集めるんでしょう? それなら、ポップコーンみたいなやつを巻き込まない方がいいじゃないですか」
響く、フィンガースナップ音。すると半径百メートルくらいの範囲の木々が、一瞬にして消え去った。
その場にうじゃうじゃいる、フレディたちはそのままに。
「「「「「「「なっ!?」」」」」」
驚きの声をあげるフレディ……その数、百人以上。これなら向こうもこっちも、見やすいわね。
私はニヤッと笑って、指を二度三度と折り曲げる。
「かかってきなさい、三下たち」
その挑発に、フレディたちがムッとしたのか一斉にこちらに走ってくる。少し遠く……いやだいぶ遠くには、私がぶっ飛ばしたガーワンの姿も見える。
これなら、一か所に集めるのも出来そうね。
「ユウちゃん! 空洞が作れたら教えてね!」
「分かったよ、女神。三分もあれば出来るから」
「――上々!」




