21話――増殖! 真の危機!?⑦
「ちょっと、カーリー! ガースリーを逃がしなさいって言ったでしょ!」
「いや、無理です! あの細目がワラワラと出てきて屋敷の中に逃場なんてありません!」
まぁあんだけ増えれば、何人かはそっちに行けるか。
よく見るとカーリーの足元にはレイラちゃんが転がっている。彼女もついでにこっち持ってきてくれたのね。
ってかこの子、こんなに大騒ぎしてるのにまるで目覚める様子がない。よくこんな中で寝ていられるわね……。
「まあいいわ。どうやってアレをやっつけようかしら」
私が言うと、ガースリーが「えっ」と驚いた声をあげる。
「た、倒すんですか!? 逃げるんじゃなくて!?」
「逃げたら簒奪失敗と見なされて、完全にアウトよ」
「だからって死んだら元も子もないじゃありませんか!」
「死にゃあしないわよ。私達、最強だから」
肩を回して、ウォームアップしながらガースリーの方を向く。
「腹、括りなさい。あれをぶっ潰してガーワンを突き出さない限り未来は無いわよ」
とはいえ、相手の能力を知らずに蹴り飛ばしたのはマズかったかしらねー。ジェイソンの時と違って、中から攻撃しても一体ずつしか殺せないし。
「ってかあいつら、こうやってガンガン増えたら食費がヤバいことなりそうね」
「ご心配なく。一晩経てば一人に統合されます故に」
私の呟きに答える声。いつの間にか二体のフレディが迫ってきていた。
屋敷から割と離れているのにすぐ追いつかれた――やっぱり改造人間なだけあって、シンプルに身体性能が高いわね。
私は舌打ちを一つしつつ、一体からのパンチを躱してからその首を掴む。
「こうやって窒息させれば――」
「女神、危ない!」
さらに三体のフレディが追加。わんこそばじゃないんだから、こんなポンポンと来ないで欲しい。
仕方なく、私は掴んでいたフレディを武器にして別のフレディにぶつける。頭と頭がかち合って脳漿炸裂ボーイになったフレディは……やっぱり光って増えた。
「あのですね、殺されるとこちらも痛いんですよ? ってか、増えるのが分かってるのに攻撃するってバカなんですか……?」
「仕方ないじゃない、殴る蹴る以外の攻撃手段ないし」
フレディの蹴りを躱し、拳を弾く。しかし私が衝撃を与えたにも関わらず、今度は増えない。
もしかすると――
「なるほど、一定以下の衝撃ならば増えないわけか。まぁそうじゃないと、日常生活で困るからね」
――そう言ったユウちゃんの周りには、フレディが五体ほど気絶していた。
「どうやったの?」
「簡単さ。顎の先だけに軽く衝撃を与えて気絶させるんだ」
明らかに高等技術ね。




