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21話――増殖! 真の危機!?⑤

 私は一瞬でガーワンの懐に飛び込み、彼の胸倉を掴もうとする。しかし敵もさるもの引っ掻くもの――細目が間に割り込み、私の手を弾いた。


「邪魔よ!」


 膝蹴りを、一切の手加減をせずに叩きこむ。鉄すら引き裂く私の蹴りを受け、細目は音を置き去りにして横の壁に叩きつけられた。


「チィッ!」


 今度は眼鏡が私に体当たりをぶちかましてくるけれど、それを躱して顔を地面にめり込ませる。手足を動かして藻掻いているけど、顔を掴んだまま両腕の関節を外して無力化した。

 床から悲鳴が聞こえてきているけれど、取り合えず邪魔者は消えたのでガーワンの首根っこを掴む。


「ひっ」


「そんなくだらない理由で! 女の子を支配してたっていうの!?」


「く、くだらないだと!?」


「ええそうよくっだらない! 悪役なら、悪人なら! 自分の惚れた相手なんて、自分自身の魅力でついてこさせるもんなのよ!」


 私は皆と『雇用契約』は結んでいる。給料を支払って、居住環境を整えている。

 でも、ついてくることを強制なんてしていない。

 辞めると言えば、辞められる。そういう雇用形態にしている。

 でも彼女らは、私に付いてきてくれている。

 私のことが、好きだから。


「悪役として、領主として、経営者として! カリスマも魅力も何もかも足らないのよアンタは! 惚れた女に断られた? だったらもっと魅力的になって帰ってきなさい!」


 ガーワンを壁にぶん投げる。叩きつけられた蛙みたいな声を出したガーワンは、その場にズルズルとへたり込んだ。


「あんたみたいなクズの話なんて、聞くだけ無駄だったわ。――ユウちゃん、さっさとあの二人を拘束するわよ」


「それは困りますねぇ」


 唐突に聞こえる、男の声。私が振り向くと……壁に叩きつけたはずの細目が血を吐きながらニヤニヤと笑っている。

 そいつはへらへらした表情のまま、舌を出す。


「それにしても、ありがとうございますイザベル・アザレア子爵。貴女が無駄話に付き合ってくださったおかげで準備が整いましたし――ちょうどよく、彼を行動不能にしてくれた」


「……一体何言ってるの?」


 私が怪訝な顔になって言うと、細目は動けなくなっている眼鏡に近づく。彼は眼鏡の肩に手を置くと、酷薄な笑みを浮かべて吐き捨てた。


「この程度の女にやられるから、今ここで使い捨てられるんだよ」


「……お、い……フレディ、テメェ……何を……」


「じゃあな、雑魚。超越者クイーンに選ばれなかった型落ち品」


 細目……フレディが目を開けてそう言った瞬間、懐から何かを取り出す。レイラちゃんがよく使う『賢者の石』に似た光沢をした……宝石、の欠片。


「待て、おい、やめ、待て、待ってくれ!!!!」


「ガーワン様、こちらへ」


「う、うむ」


 叫び、咆える眼鏡を無視してガーワンの手を取るフレディ。何かマズイことが起きようとしている――そう判断した私は、彼らを止めようと走り出す。

 だが次の瞬間、三人ものフレディに行く手を阻まれた。


「なっ……!?」


「「「おとなしくしておいてください、イザベル様」」」


 同時に繰り出されるパンチ。私は地面に焦げ跡が残るほどの勢いでバックステップして、ユウちゃんの横に戻る。


「何あれ!?」


「分身魔法……? いや、ちょっと違うね。あれは……なんだろう、僕も生まれて初めて見た!」


 私たちが驚愕していると、向こうではさらに驚愕な出来事が起きていた。

 宝石の欠片が光ったかと思うと、眼鏡がまるでスライムのように溶けていき……なんと、ガーワンに吸収されていっているではないか。


「はぁ!?」


「おお……力が、力がみなぎる!」


 真っ黒に光り、肌の張りが増していくガーワン。見るからに……若返っている。まるで現実味の無い光景に私とユウちゃんが怯むと、増えたフレディと若返ったガーワンがこちらへ走ってきた。


「来るんじゃ、無いわよ!」


 私は床を蹴り砕き、その瓦礫をガーワンとフレディに向けて吹き飛ばす。直撃し、吹っ飛ぶ二人――だが次の瞬間、ガーワンが巨大化し、フレディがポップコーンのようにはじけて増えた。


「すさまじい勢いの蹴りだ! まさか一撃で二十人にまで増えるなんて!」


「おお……力が、力がみなぎる。体が巨大化する! 痛みも殆ど無い! どうなってるんだ!?」


「流石です、ガーワン様。すぐさま『サイクロプス』の能力を掴むとは」


 意味が分からないが、なるほど理解した。

 こいつら――衝撃を受けたら、増えたり大きくなったりするんだ!


「ジェイソンは衝撃無効、こいつらは衝撃増加って感じ?」


 流石は改造人間、意味が分からない。

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