21話――増殖! 真の危機!?③
「ゲホッ、ゲホッ……。お、おお、来てくれたか……!」
希望に満ちた目で、縋るように彼らの後ろに隠れるガーワン。その動きだけで、こいつらと密接なつながりがあるってことは容易に想像できる。
「アンタら、何者?」
警戒しつつ、取り合えず名を問うてみる。
一人は背の低い、眼鏡をかけた小男。鍛えられているのか、着ているスーツがまるで似合っていない。
もう一人は背が高く髪をオールバックにした細目の男。二メートルくらいはありそうね。二人とも武器は携帯していないが、殺意と殺気が普通の人間じゃない。
そして何より、顔が尋常じゃなく整っている。
「人造人間……」
「いえ、改造人間です!」
カーリーが叫びながら構える。私は前に出て、スッと両腕を上げた。
「どいてくれんなら、痛い目見ないで済むわよ」
「ご安心ください。我々を痛めつけるなど、並みの人間では不可能ですから」
背の高い男が、恭しく礼をする。慇懃無礼で、たぶん職場とかにいたら無限にぶん殴りたくなるタイプね。
「それによォ! テメーにはジェイソンをぶっ殺された恨みがあっからなァ!」
小男が笑いながら言う。
ジェイソンを……ってことは、オルカの件は知っているのね。っていうか眼鏡かけてるのにその喋り方って……キャラがチグハグねぇ。
(ジェイソンは……なんか最高傑作の一人とかなんだっけ)
流石にアレと同レベルに強いとなれば、おめかししたドレスじゃ戦えない。止む無くドレスを破り、床を踏みしめてヒールをへし折った。
「ひゃわっ」
後ろで目を隠すガースリー。見られて減るモンじゃないから別にいいんだけど――目の前にいる気持ち悪いおっさん連中の下衆な目と違って、そういう初心な反応が返ってくるとちょっとしてやった気分になるわね。
「それじゃあ、やりましょうか。アンタら消し飛ばしてから、ガーワンと話した方がいいだろうし」
「まぁまぁ、お待ちください。貴女がガーワン様をどうこうしようとするならば、確かに殺し合うしか御座いません。しかしガーワン様の境遇を聞けば、きっと同情してくださるでしょう」
……いやこっからどんな情報を出されても微塵も同情出来ると思えないんだけど。
とはいえ、だからってワンパン入れて倒せるほど隙があるわけじゃない。ガースリーが戦いに巻き込まれたら困るし、一旦彼を逃がす時間を稼ぐ方がいいわね。
「じゃあ聞かせて貰おうじゃない」
そう言いながら、私はカーリーたちに目配せする。カーリーとユウちゃんが一度ガースリーを見てから、私にアイコンタクトを返してくれたので……意図をくみ取ってくれたのだろう。後は彼女らに任せて、ここはいったんこいつらをどうにかしようかしらね。
何をする時間を稼ごうと思っているのかしらないけど、向こうも何かしらしたいみたいだし。
「ほら、ガーワン。言い訳タイムよ」
私が彼に言葉を促すと、ガーワンは忌々し気な目でこちらを睨んできた。
「ガーワン様、大丈夫でしょうか」
細目が胡散臭い笑みで彼に問うと、ガーワンはゆっくり立ち上がって口を開く。
「私は……契約と言うものに失望した。レギオンホース家の人間としては顔も醜く、能力も低く生まれた私は……兄たちが羨ましかった」




