21話――増殖! 真の危機!?①
こちら、本年最後の更新となります。
次回更新は元旦からです。
というわけで皆さん、良いお年を~
「あー…………良かった。ここでガーワンの過去語りをグダグダやられてたら気が滅入るところだったし」
私は足を百八十度天に向けた後、真下に降ろす。こうやらないとスカートが皺になっちゃう気がするのよね。
……なのに、それを見たカーリーが私の頭を叩く。
「はしたないですよイザベル様! ちゃんと今くらい、パンチでどうにかしてください!」
「別に良いじゃない。この場にいる男どもは、ガースリー以外皆粉砕するんだし」
髪をかき上げながら言うと、私の足元に血がついているのが見えた。どうもギルバートってのを蹴っ飛ばした時についたらしい。
……ヒールで蹴ったから、もしかすると穴空いたかしらね。
「ま、どうでもいいけど。生きてようが死んでようが。つーか、喜びなさい。あいつら、実力行使に出たわよ! つまり――この場で全滅させれば! 必然的にガースリーが次期当主よ!」
テンションを上げてそう言うと、ガースリーはぽかんとした顔のまま動かない。そんな私を見て、ユウちゃんは楽し気に笑う。
「あっはっは、女神は相変わらず豪快だ。まぁでも、少しホッとしたよ。レギオンホース家お抱えの騎士団っていうのが……こんなに低レベルでね」
そう呟いた瞬間、ガーワンたちの背後に立つ騎士たちが音も無く倒れる。ガーワンたちが驚いて振り向くが、そこには私のユウちゃんが剣を納めて立っていた。
「なっ……き、貴様! その剣はどこから! というか……な……! な、何をした! 何をした!」
「悪党に見せる剣技は無いからね。気づかれぬよう接近して切り伏せただけさ。――ああ、急所は外しているからご安心を。女神から命令が出ぬ限り、命までは取らないさ」
「ボクが後ろに送ってあげたんですー。感謝してください!」
カーリーが得意げな表情で胸を張る。そんな彼女を取り合えずギュっと抱きしめる。
「えっへん」
「可愛いわねぇ」
私がそう呟いた時、後ろにいる騎士たちがいきなり斬りかかって来た。仕方が無いので全滅させようとしたところで――マリンが動いた。
「弱い」
マリンはナイフを抜くことも無く、普通に殴る蹴るのみで騎士たちを倒していく。
「つーか姐さん。暴れて嬉しいって言ってましたけど……こいつら本当に騎士ッスか? 弱すぎますし、ただの執事がテキトーに立ってただけとかじゃないんスか?」
「流石にそんなこと無いんじゃない?」
私は倒れている騎士を持ち上げ、着ている鉄の鎧をぺりぺりと剥がす。中から出て来たのはかなり鍛え上げられた身体。
これだけ鍛えてるなら、流石にただの執事ってことは無いでしょうし。
「いやあの……えっと、イザベル様?」
やっと動き出したガースリーが、引きつった笑顔でこちらを見る。
「あら、どうしたのガースリー」
「…………い、今の動きは?」
今の……っていうのは、ギルバートを蹴飛ばした件かしら。
「蹴ったのよ」
「蹴りですかアレ!?」
「蹴り以外、なんだっていうのよ」




