表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/312

20話――ぼっち・ざ・とうしゅ!⑤

 決定的な言葉、一度出したら二度と取り下げられない……不退転の覚悟を持たねば発せない物。

 親子の縁を切ると言うに等しいそれを聞いてなお――二人はニヤニヤした顔のままだ。

 それどころか……。


「「わっはっはっはっは!」」


 なんと、大笑いしだすではないか。


「な、何がおかしいんですか!」


「何がおかしいだと? では聞くが……ガースリー。何故私はここにいると思う?」


 ここは父の部屋だが、イザベル様が祖父を怪我させたのだから……必然、敵対すると思って集まって対策を立てていたのではないだろうか。


「たがそれだけであれば、ガーツーを私の部屋に呼べば良い。別にここで待ち構える必要は無い」


 確かに、怪我をしているのであれば尚更だ。


「それに、何故……ここに騎士を配置しているのだと思う? 普通であれば、情報を持った人間を逃さぬために屋敷の外苑に配置するはずだ」


 ……それも、確かに。

 まるでここに、オレ達が来るのを分かっていたみたいだ。

 まるでオレを嵌めるために――


「ま、まさか」


 ――嫌な予感が脳裏をよぎる。オレが動く前に一人だけ、この状況を知らせることが出来る人物がいる。

 オレに働きかけ、こうして罠に嵌めることが出来た人物か。

 首を横に向ける。そこにいるのは、麗しい女性。

 だが、その実態は……!


「まさか……まさか、イザベル様!?」


「んなわけ無いでしょ。もう一人いるじゃない、ここに来るまでにガーワンに伝えられた人物が」


 嘆息するイザベル様。すると次の瞬間、肩を力強く掴まれた。その手の厚みも重さも、オレがよく知っている物で――


「……ギルバート、さん……?」


 ーー無表情に見下ろす、彼の視線から感情は読み取れない。

 まるで理解が及ばない、思考が空転する。今自分が夢を見ているのか現実にいるのか、それすら分からない。

 ただ……彼のくい込む指の痛みだけが、オレを現実に引き戻す。


「ご苦労だったな、ギルバート」


「なんのなんの。この老骨、ご主人のお役に立つべく働いています故」


 いつも通り、いつも通りの好々爺といった雰囲気。オレに常に向けていた優しい笑みを、今は祖父に向けている。

 それが余りにも受け入れられず、振り向いて彼の胸ぐらを掴んだ。


「ギルバートさん! 裏切ったんですか……裏切ったんですか!? 主人のために、って! 言ってくれたのは嘘だったんですか!?」


「坊ちゃま、おかしなことを申されますな。私は主人のためを常に思っております故」


 主人、主人。

 受け入れたくない、考えたくない。しかし状況が、彼の表情が雄弁に伝えてくる。

 彼は最初から、自分の味方では無かったんだと。


「信じていたのに……信じていたのに!!」


「ええ、ええ。信じてくださったので、だいぶ楽でしたよ坊ちゃま。簡単に武装を解除してくださりました故」


 そう言われてハッとし、腰に手をやるが当然そこに愛剣は無い。悔しさに歯噛みするが、今はそんなことを言ってはいられない。イザベル様を守れるように、彼女の前に立つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あ、やっぱり味方じゃないんだ。 そしていつもの如く戦闘突入
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ