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20話――ぼっち・ざ・とうしゅ!④

「なっ……!?」


 オレが驚くと同時に、先に入っていたイザベル様が「あら」と軽く声を漏らした。


「ちょっと強めに投げ飛ばしたのに……結構ピンピンしていらっしゃいますのね、ガーワン様」


 イザベル様の視線の先にいる祖父は……血を吐いたのだろうか、口元を血で濡らしており、足を引きずっている。片手には包帯が巻かれており、満身創痍と言った風体だ。

 しかし、イザベル様からするとピンピンしているように見えるらしい。いくらなんでも怪我に対する考え方が常人のそれと違いすぎる。

 祖父も似たようなことを思ったのか、忌々し気にイザベル様を睨みつけた。


「……そう見えるか?」


「ええ。精神的にまいっているご様子がありませんから」


 優雅な微笑みを湛え、煽るような目で睨み返すイザベル様。祖父は……あんな外道働きをしていたとしても、六十年近く貴族として戦っている男だ。一方、イザベル様はオレと同い年……それも、去年から領主になった身。

 だというのに互角でにらみ合っている。


(……凄い、イザベル様は)


 堂々と胸を張る彼女の横に立っていると、それだけで自分が強くなったように錯覚してしまう。

 しかし今は、そんなことを考えている余裕はない。彼女を助けるためにも、そして祖父たちの外道を止めさせるためにも……今だけは、横に並び立たなくてはならない。

 オレは一歩前に出て、父と祖父をまっすぐ見据える。


「お父様、お祖父さま! イザベル様から話を聞きました! なんてことを……なんてことをしたんですか!」


 糾弾するように言うと――いきなり二人が笑い出した。

 愉快そうに、まるで幼子がままごとで料理を出した時のような……そんな、あやすような表情で。


「何がおかしいんですか! オレだって無策で来たわけじゃありませんからね!」


「ほら、アンタらの人に見られちゃまずい証拠もここにあるわよー?」


 例の絵を数枚取り出し、軽く振って見せつけるイザベル様。しかし彼らはそれでもまだ、ニヤニヤとした笑みのままだ。


「ガースリー。お前はもう少し聡明だと思っていた」


「そうだぞ、息子よ。まさかこんな短慮を起こすなんて……嘆かわしい。お前に父への敬意は無いのか!」


 父に怒鳴られるが――あんなことをやっていた相手をもはや父とは思えない。オレにとっての父は、ギルバートさんだ。


「黙れ! 人を人とも思わぬ所業……! オレはもはや、貴方達を肉親とは思えない! ――今この場で家督を譲っていただけないのなら、この証拠を持って貴族裁判所に申し立てます! お父様には経営実績がありませんし、この証拠があれば……お祖父さまの責任能力も問えます! 今ここで、家督を譲っていただきます!」

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