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20話――ぼっち・ざ・とうしゅ!③

 心の中で怒りをぶち撒けながら、オレはギルバートさんを追いかける形で歩き、父の部屋へ向かう。

 可能性としては低いだろうが……父がもし騙されているのなら。オレ達の味方をしてくれるなら、心強い。オレが家督を簒奪しなくて済む。

 また祖父とグルだったとしても、まだ父のほうが与し易い。一番最悪なのは、既に祖父が目覚めていて……父と合流していることだ。

 父は事なかれ主義で領地経営に明るいわけでは無いけれど、決して無能というわけじゃない。二人が揃っているからといって、オレたちが有利になることはあり得ない。


「しかし坊ちゃま。私を頼ってくださって嬉しいです。成人してしまってからは、あまりお話も出来ませんでしたからな」


 笑いながらそう言うギルバートさん。


「すみません、ギルバートさん。忙しかったものですから……でも、力を貸してくださって嬉しいです」


「ほっほっ、なんのなんの。この老骨が主人の役に立つとなれば、おちおち隠居もしていられませんからな」


 昔から変わらぬ飄々とした態度。その様子に少しほっとしてしまう。


「それにしても、静かだね」


 イザベル様の執事が呟く。


「今、ガーツーの部屋に向かってるからじゃない? ガーワンが気絶したままなら向こうの部屋に集まってるだろうし」


「そうですね」


 オレがそう言うと、イザベル様が少し心配するような様子で声をかけてきた。


「ガースリー、あんた大丈夫? さっきから顔色悪いわよ」


「今から肉親と対決するッスから、そりゃ顔色も悪くなるッスよ。むしろなんでそんな飄々としたままなんスか姐さん」


 メイドさんが若干呆れた様子になる。主従なのにこんなに砕けた関係とは……二人の付き合いは相当長いのだろう。


(……肉親の情、か)


 母とはあまり会えなかったが、かといって父ともあまり仲良くない。ある程度の年齢になってからは会う頻度も増えたが、貴族としての会話が殆ど。

 オレは乳母のジェニファーさんと、ギルバートさんに育てられたようなものだ。

 そしてそのギルバートさんは隣にいる。一緒に戦ってくれる――これ以上、心強いものはない。

 彼の顔を見ると、いつも通り頼もしい笑みを返してくれる。そのおかげで……イザベル様から指摘された、険しい顔もいくらか改善できた。

 大丈夫、大丈夫。


(ギルバートさんがいるんだ。最低限逃げおおせることは出来るはず。……その場合は被害が大きくなるから心苦しいけど、何もせずに手を拱いているよりはマシなはず!)


 絵の中で見た、母と祖母の苦しそうな表情。きっとあんな思いをしている人がたくさんいるはず。

 その人達を少しでも、救うためにも。


「坊ちゃま、いざという時はお守りします故……前へ」


「ありがとう、ギルバートさん」


 ギルバートさんに言われ、オレが扉の前に立つ。生唾を飲み込み、深呼吸して――


「なにグダグダしてんのよ。さっさと開けなさい」


 ――後ろに立つイザベル様が、扉を開け放つ。いやなんで!?

 そしてオレを押し退けて部屋の中へ入っていくイザベル様。慌てて追いかけると、最悪なことに……中には祖父と父親が立っていた。

 大勢の騎士たちを連れて。

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