20話――ぼっち・ざ・とうしゅ!②
ギルバートとやらの言う通りなら、私達も何も持たない方がいいか。
私は少し考えてから、天井を見上げる。
「天井裏に隠しておいて、カーリーの指パッチンで戻したら?」
「まぁ出来ますけど、どうやって天井裏に隠すんですか?」
「……アンタの指パッチン?」
「ノープランなこと、全部ボクのスペック任せにするのやめません? まぁ出来ますけど」
出来るのね。
「あ、あともう一つお願い」
「なんです?」
私達がそうやって(見た目だけは)武装解除して待っていると、ギルバートが剣と簡単な鎧だけ付けて出て来た。
「ではまいりましょう」
「ありがとうございます、ギルバートさん!」
目をキラキラさせているガースリー。
お爺さんに懐いている美少年っていうのは、なかなかそそるわね。
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日が落ちた暗い廊下に――オレたちの足音だけ響く。その足取りは、ハッキリ言って重い。
(お父様……お祖父様……! なんてことを……!)
幼い頃から、レギオンホース家の名前は誇りだった。女好きの一家などと揶揄されてはいたが、武に秀でて領地経営も良好。まさに理想……とまで言われていたからだ。
その名に恥じぬよう、レギオンホース家の跡取りとして相応しい男にならんと、オレは毎日剣に勉学に励んでいる。
(思えば……幼い頃から何かおかしいとは思っていた)
母はあまり笑わない人だった。貴族は産まれてからは乳母に育てられるため、あまり母と関わり合いは無い。しかし会う度、彼女は悲しそうな顔をしていた。
それだけじゃない。そもそもオレの父親――ガーツー・レギオンホースは三男だったらしい。しかもいつの間にかいなくなっていた執事曰く、『昔と顔が違う』んだとか。
その時は怖くて何も聞けなかった。しかし、今なら分かる。この家には『ナニカ』が起きているのだということが。
あの精巧な絵が、その『ナニカ』に関わっているのは間違いない。
(なんとしてでも……オレが止めて見せる! じゃなきゃ知った以上、オレも危ない!)
怒りで拳が震え、目の前が真っ赤になる。
イザベル様が渡したいくつかの絵――その中に写っていた、一枚を見てからガースリーは肉親への情など消え去っていた。
母を甚振る、祖母の姿を見てから。
(許せない……許せない! 絶対に、絶対に!!!!)
どうしてこんなことが出来るのか。
どうしてそんなことをさせたのか。
どうして、どうして!




