20話――ぼっち・ざ・とうしゅ!①
「なんと……そのようなことが。承知しました、坊ちゃま。このギルバート、微力ながら力添えさせていただきます」
というわけでナイトキャップをかぶったお爺さんが出てきた。白いカイゼル髭を蓄えた老人。しかし鍛え上げられているようで、パジャマが破けそうなほど筋肉が膨張している。
これなら結構、強そうね。
「(このおっさん、だいぶやるッスよ。少なくとも、父親の私兵にはこのレベルの人はいなかったッス)」
「(そりゃ凄いわね)」
でもアンタの親父さんのとこ、ジェイソン以外は十把一絡げだったし……。
まぁ取り合えず強そうなのは確か。この人が協力してくれて、相手の数が一人でも減るならラッキーね。
「では少々お待ちください、武装を整えてきます故。ただ坊ちゃまは、剣を置いていかれた方がよろしいかと」
そう言われてガースリーの腰を見ると、しっかり剣がぶら下がっている。気づかなかったけど、あの部屋から出る時にちゃんと帯剣してきてたのね。
「……今からカチコミに行くっていうのに、武器を持たないっていうのも変な話じゃない?」
「イザベル様、口調口調!」
おっといけない。私はひとつ咳払いして、笑顔を作った。
「今から危険があるかもしれない上に、この通りか弱いわたくしと共に行くのです。剣の一つも持たぬというのは……如何かと思います」
「そのための、わたくしで御座います。イザベル様、これから話し合うというのに最初から武器を持っていては、相手に必要以上に警戒されてしまいます故」
……言われてみれば、最初から喧嘩腰って思われたら拗れかねないか。相手に話し合う気があるのなら、だけど。
ガースリーは納得したのか笑顔で頷き、剣を腰から外した。
「そうですね。こちらはどうしましょうか」
「わたくしの部屋に置いておきましょう。なに、いざとなればわたくしが二本目の剣をお渡ししますよ」
そう言って一回引っ込むギルバート。ガースリーは私の横でガッツポーズしている。よほど彼のことを頼りにしているのね。
ただ……。
(ガースリー、この子大丈夫かしらね)
今から親を蹴落としに行くっていうのに、その悲壮感が見られない。開き直ってるって言われたらそうなんでしょうけど……。
「女神、そう言えば僕らはどうするんだい?」
「どうって?」
「武装だよ。暗器がメインのマリンちゃんや素手でゴブリンキングを引きちぎる女神はともかく、僕とカーリーは武器が大きいからね」




