3話――ラウワの帝王-②
私の言葉に頷くカーリー。一旦二人で深呼吸した後、「よし」と気合を込めて扉に手をかけた。
「お邪魔しますわ」
開けるとドアベルの音が鳴り、中からなんとも言えない空気が流れてくる。淀んでいるというか、荒んでいるというか。
何にせよ……カタギの空気は流れていない。
「はーい、いらっしゃいませ。冷たいお茶とお茶菓子をどうぞ」
微笑みの眩しいイケメンがお茶を持って登場した。私たちが男だったら、たぶんカウンターの奥にいる美女が出迎えてくれたのだろう。
部屋はカウンターで半分に分かれており、奥には明らかにヤクザな従業員たちが。入口側のスペースには三人がけのソファーが二つとローテーブルが置いてあり、商談スペースになっているようだ。
手続きはカウンター、話はテーブルで……って感じなのかしらね。
私は咳払いしつつ、イケメンから差し出されたお茶を拒否した。
「お茶しに来たわけじゃないの。オルカさんはいらっしゃる?」
私が問うと、室内に緊張感が走る。それもやや剣呑な雰囲気だ。
いきなりトップを出せなんて言う奴、警戒して当然だと思うけどね。
とはいえここでモタモタしているのも意味が無い。私はさっさとサングラスと帽子を取った。
「なっ!」
「あ、あなたは!」
途端にざわつきだす店内。ちょっとだけ黄門様の気分を味わいつつも、お茶を持ってきたイケメンの方を見る。
「イザベルが来たと伝えて」
「は、はい」
慌てつつカウンターの方へ引っ込んでいくイケメン。私はカーリーを連れて、ソファに腰をおろした。
「お茶くらい貰っても良かったんじゃないですか?」
「毒が入ってないとは限らないじゃない」
流石に毒は無いかもしれないけれど、用心するに越したことは無い。
数分も経たず、中から禿げ上がった中年男が一人出てくる。ライトとドローが描いてくれた特徴にピッタリ、あれがオルカね。
「これはこれはイザベル様……! 仰ってくだされば、いつも通り使いのものを送りましたのに。今月のご返済の件……ですよね?」
もみ手をしながら出てくるオルカ。しかしその目はじっとりしており、こちらを値踏みしていることが伝わってくる。
基本的にヤクザは舐められたら負けなので、どんな相手でも下手に出ない。しかしこの男は平然と腰を折っている。
半分以上商売人になっているのだろう。プライドを曲げられる男は厄介だ。馬鹿みたいに暴れてくれる方がまだやりやすい。
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