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19話――突撃! 隣の悪役令嬢!②

「こっちは、たぶん別枠だけど……最初に脅して言いなりにさせたヤツを拷問にかけてる。どんな意味があるのか分からないけど」


 じっくりは読めなかったけど、ちょっとだけ見れた資料には「売り物」などと書かれていた。

 奴隷売買では無いから、写真を売るのかそれとも別の何かがあるのか。分からないけど、一つだけ言える。


「アンタのお祖父さんが権力を持っている限り、この罪は裁かれない。やってることがみみっちいのよ」


 矜持が感じられないーーというか、何がしたいのかが分からない。

 金儲けでも、繁殖でも無さそう。しかし狂気と執念だけは異常に感じられる。普通ならこんなこと出来ないし、しようとも思わない。でもかなりの長期間、これらは行われている。

 人を人とも思わぬ拷問が。


「……一体、どうしてこんなことを? いえ、そんな、そんなバカな! お祖父様が、こんなこと――」


 私の渡した写真を何枚か見ながら、怒りに任せて怒鳴るガースリー。しかしその手がピタリと止まり、一枚の写真を信じられない物を見るような目で見た。

 どうしたのか――と思ってその写真を覗き込もうとすると、彼はそれを握りつぶしてしまう。


「……どうしたの?」


 そう問うてみても、彼は何も答えない。その代わりに……激しい怒りと深い悲しみを携えた顔になる。

 たっぷり五分ほど黙り込み……彼は、歯を食いしばった。


「……イザベル様、どうしてこんなことをしたんでしょう」


 さっきと同じ問い。しかしさっきと違い、その言葉の奥に『疑い』が消えている。混乱でなく、純粋な疑問。

 動機に対する、『Why』。

 取り合えず私は、肩をすくめて彼の問いに答える。


「さぁ? 動機なんか知りっこ無いわ。ただ一つ言えることは、このままガーワンを放置しておけば……とんでもない数の人たちが犠牲になるってことだけね」


 そこまで言った後……あまりに話が早すぎる彼に、違和感を覚えた私は疑いの目を向けながら問うてみる。



「……普通、私の方を疑うんじゃない? それとも、これらに心当たりでもあるの?」


 彼はこの行為を肉親がやっている――その事実を受け入れているように見える。最初は『信じられない』という反応をしたのにも関わらず。受け入れるどころか、怒りすら覚えている。


(見た感じ、演技っぽくは無いけど……)


 今のところ、ガースリーは素直で腹芸をあまりしない男に見えているけれど……ぶっちゃけ私は、しないどころか死ぬほど苦手。これが彼の演技だとしたら、見抜きようがない。

 彼が協力してくれないだけならまだしも、こちらを欺こうとしていたら私達は大ピンチなんて物じゃない。何が何でもここで見極めないと。

 私の問いに、ガースリーは眉にシワを寄せて難しい顔になる。


「……オレが幼い頃、今まで一度も見たこと無かった母の裸を見たことがあります。痣と切り傷だらけでした。母は庭の手入れをしていたら転んだと言っていましたが、オレは彼女が庭で何かしていることを見たことありません」


 貴族の女性が、自分の趣味を超えて庭仕事をするなんて基本はありえない。

 我が家みたいにド貧民領地でもない限り、貴族は労働なんて無縁だ。


「また、以前出入りしていた貴族の女性が突然メイドとして迎え入れられたり、兄のように慕っていた男性が何故か執事になっていたり。不自然な出来事は多々ありました。この資料を見て、やっとそれらの意味と理由が分かりました」

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