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19話――突撃! 隣の悪役令嬢!①

「今夜は、月が綺麗だ。共に見る相手はいないし、特に見たいと思う相手もいない――ああいや、一人いたか」


「おや、どうされましたか、坊ちゃん。ふふ、恋煩いですかな?」


「揶揄わないでくれよ、爺や。オレが彼女に恋煩いなんて……百年早い。あんなに美しい人は、初めて見た。可憐で、しかし強靭でしなやか。まるでこの世に顕現した太陽の化身のようだったよ」


「あら、そんなに言ってくれるなんて光栄ね。いいのよ? 傅いても」


「いや、オレは彼女と並び立ちたい。だから傅くんじゃなくて、彼女の隣にいたいんだ」


「そしてゆくゆくは私の婿に? ちょっとそれは夢見過ぎよ」


「分かってる。きっと彼女に相応しいのは王子くらいしか――ってイザベル様ぁ!?」


 なんか私にだいぶ心酔してくれてるみたいだけど、神格化されても困る。私にも出来る事と出来ないことがあるんだし、そもそもそんな大した人間じゃない。

 この前までただの村娘だったしね。


「え。あ……い、イザベル様……ど、どこから!?」


 目を真ん丸に見開いたガースリーが、私、カーリー、ユウちゃん、マリンを見て仰天する。ちなみに室内にいた執事っぽい人はカーリーが位置を入れ替えた時にどっかへ行った。たぶん部屋の前で混乱してるんじゃないかしら。


「どこからって言ってもね、この子が転移の魔法を使えるのよ」


「あ、どうも」


 私がカーリーを紹介すると、ガースリーは口をあんぐりと開けて首を傾げる。何が不思議なのかしら。何故か水の中の酸素が足りない金魚みたいになっているけれど、他に質問が無いなら話を進めてもいいかしらね。


「ごめんね、夜遅くに。ちょっとアンタに話があるのよ」


「え、は、話? お、オレにですか?」


「そう。まずはこれ、見てくれる?」


 私が彼に資料のいくつかを見せると、彼は眉に皺を寄せて真剣な目でそれを何度も何度も読み直す。


「これは……」


「アンタのお祖父さん――ガーワンが私を陥れるために進めていた計画よ。結構巧妙に隠してたんだけど、棚から牡丹餅というか勿怪の幸いというか……それを知っちゃってね。ハッキリ言って、人殺しの計画よ」


「人殺し!?」


 人殺し、という強いワードに激しく反応するガースリー。そして再度指示書を見ると、わなわなと震えて書類を握る手に力を込めた。

 彼が見ている部分は、ダムの指示書ね。間違いなく数十人以上が被害を受ける。


「こんな……こんなことが許されるんですか!?」


「勿論、許されないわ。普通なら」


 この国には一応、法があり秩序がある。それを乱そうとすれば取り締まる者もいる。しかしあくまでそれらは、普通ならの話。

 それらを超越する権力を持つ者は、ルール違反を握りつぶせる。

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